外つ歌 片腕の調停者
クェースとともに地上近くまで降りた静日は、そこで想像を絶する何かが起きていることに気づきました。地に巨大なクレーターができて、人為的と思われる低気圧が雲や風を巻き起こしていたのです。
クェースが警戒の声をあげているのを背を撫でて落ち着かせ、静日は一本しかない腕で自身が振り落とされないように捕まる必要がありました。
--何、何が起きているの。
大きく旋回してもらい、静日とクェースは目を凝らしました。嵐の中で二人の人が戦っているように見えました。
あまりの事に口を半分呆れた後、静日は怒りました。こんな時に何をやっているんですかというヤツです。
--あそこを狙える?
トリトンに作って貰ったレーザー防御用のまんまる色眼鏡を掛けて、静日はクェースに指示しました。
クェースはクェースと鳴いて、口の先にレーザーを励起させると発振。1mm秒のパルスレーザー三千発となって二人の間に着弾させました。二人が飛んで離れて距離を取るのが見えました。
地上から五mほどの距離をフライバイ、静日はよっこいしょとクェースに声を掛けて、クェースの身体を引き起こすと、そのままプガチョフコブラ機動から垂直上昇、インメルマンターンで再度フライバイすると手を離して地上に飛び降りました。
争っていた黒すぎて青く見える髪の少年と、黒衣の青年が同時に手を伸ばして静日を抱き留めました。
--どこの誰か分かりませんが、争いはやめてください。
肋骨をいくつかやったか、痛みに顔をしかめながら静日が言うと、クェースが降りてきてクェースと泣きそうな声で近づいてきました。
--大丈夫。まだ死んでないよ。
二人が言う中で静日は口から血を流しながら言いました。
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