新歌集より 竜の数え方
草原に戦争の見物客が着ているとピロット族が気づいた頃、一足先に事態に気づいて動いている知的生命体たちがいました。
それは竜です。竜の巣にて竜たちは歌を歌って話し合い、竜の皇帝であるトリトンは生命倫理の崩壊と核兵器の使用に対して反対の立場を明確にするために派兵を決定、草原に一〇海ほどの竜を展開させて、まずは周辺地域の切り離しと環境保全を始めました。
雲海を抜けて静日はクェースとともに朝日を共に眺めました。上面についた目でクェースは静日が朝日を眺めているのを知ると、翼を広げて朝日をもっと浴びるよう、その身体を傾けました。
ーークェース、編隊飛行中は姿勢を勝手に傾けてはいけませんよ。
雲海の下から飛び出した竜のエリダイナは、お姉さんらしくそう言って優雅にクェースを追尾しました。
クェースは、無視。静日が飽きるまで朝日の方を向くと、その後機位を正して噴射孔に二次点火、速度を上げて飛びました。
翼端から剥離した空気の層が雲のような白い線を作り、それがくるくると捻ってねじれて、クェースと静日の動きを示しました。
ーー生意気な仔ね。
エリダイナは言うと、他の竜とともに一糸乱れぬ動きでクェースを追いかけました。
クェースはさらに速度を上げようとしてやめました。背の静日がつらそうになる前に、速度競争をやめたのでした。
あんまりいたずらしたらダメだよと静日はクェースに言い、クェースはクェースと鳴いて返事をしました。
エリダイナが横を飛んで、いくつかの目で一人と一つ海を見ました。興味深そうにも、懸念しているようにも見えました。
視線に気づいて、恥ずかしそうにありもしない片腕を隠すと、静日は誤魔化すようにエリダイナに言いました。
ーー竜は何故、海と数えるのですか。
ーーだいたいそれが竜の単位だから。
エリダイナの返答は端的でした。もちろん、これでは全然分かりません。だいたい竜は説明不足なので良くある話です。静日はめげずに声を掛けました。
ーー竜の単位はなぜ海なんですか。
ーー竜一匹が生きるのに海が一ついるから。だから昔は海の名前に竜王とつけてその名にしていたの。
ーー太平洋竜王とか日本海竜王とかインド洋竜王とか……
ーー聞いたことないけどその通り。
竜にも知らないことがあるのかと静日はびっくりしましたが、それよりもクェースが不機嫌そうなのでなだめるのに苦労しました。
ーーあ、また人間。注意をしてきます。
静日はそう言って、行こう、クェースと声を掛けました。
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