愉快な二人組
リベカとリチャードが訪れたのは、皇女が住むにはみすぼらしい館でした。
お触れの高札が出ていたにもかかわらず、人はまばらで、誰も相手にしていないであろうことは、音を聞いただけで分かりました。
--たのもう、じゃなかった。こんにちはー。
--たのもうでいいんじゃないか?
声を上げたリチャードにリベカは肘鉄を食らわせると、館から出てきた迎えにかすかに身を固くしました。
--はい。あっ。
--どうかしましたか。
聞き慣れない綺麗な声に、心持ち高い、リベカの声。
--い、いえ。知り合いに似ていた方がいらっしゃって。すみません。どのような御用で?
--高札を見て来ました。
--ありがとうございます。あなたがたが最初のお客様、ということになりますね。
綺麗な声の人は、悲しみを含んだ声で言いました。冷やかしも来ない。そんな感じだったのでしょう。
リベカはうやうやしく膝を折りました。
--いえ。私はリベカ、踊り子ですが剣も使えます。こちらは旅の学者の”フンジバルド”です。
--フン……
リチャードは最初の二文字目で肘鉄を食らって悶絶しました。
--すみません。自己紹介の途中で邪魔されると、ついかっとなるんです。
うずくまりながら、リベカの話を聞いてリチャードは、事情を察してリベカにあわせることにしました。
--フンドドボルトです。趣味は真実を口にすることです。よろしくおねがいしまーす。
--あの、フンドドボルドさんは目が……
--フンガフンガドンです。ええ。目を少々悪くしておりまして。
そしてそのまま、リチャードはリベカに連れて行かれました。
--もうちょっと考えてよ。
--あわせてるつもりだが。彼女に……皇女に嘘をつきたいんだろう?
--うっ。
リチャードはリベカの頬に優しく触りました。
--安心したまえ。僕は君の友人だ。それに偽りはない。もとよりお付きの者もおらず自ら出迎えに来るような困窮の姫君とあらば、救わずには居られない。
--いつものようにつまみぐいしたら怒るからね。
--冗談もほどほどにしたまえ。私はそんなことをしない。
二人は肩を組んで綺麗な声の人の前に現れました。
--ということで、不死の化け物を倒しにいこうかと思うんですが。どちらにいけば。
二人は声を合わせていい、綺麗な声の人を微笑ませました。
--愉快な人たちですのね。でも、不死の化け物たちはとても強いのです。お茶をお出ししますから、お話を聞いてくださいな。
--ありがたき幸せ。
リチャードとリベカは同時に言い、お互いの脇腹を肘で突きました。
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