黒い影の正体


俺達は、エレナの千里眼で黒い魔物を探しながら町を歩いている。中々見つからないということはこの辺りにはもういないのだろうか?


「翼と尻尾……見つけた!!」

「本当か!?」


エレナが千里眼でそれらしい魔物を見つけたらしい。


「どんな魔物だ?」

「あれは……人?」


黒い正体は魔物ではなく人らしい。魔物ではなく人で翼と尻尾が付いている。この世界にもコスプレってあったんだな。


「詳しい姿は黒いモヤモヤで良く見えません」

「そうなると、実際に見てみるしかないですね」

「そうだな。案内してくれエレナ」

「わかった!」


俺達はエレナの案内で黒い魔物か人がいる場所まで急いで向かった。


暫く走っているとそれらしき影が見えた。確かに翼と尻尾があって人型だ。


「………」


黒い影が何かゴブリンにをふりかけた。

その瞬間……


「「グギギャ」」

「なっ!?」

「ふ、増えた……!?」


分裂……いや、分身と言った方が正しいだろう。だか、見た感じどっちかが偽物とかではなくどちらも本物のように見える。


「さぁ、行って」


黒い影から出したであろう女性の声に反応して分身したゴブリン達は町に放たれた。

だが、それを許す俺達ではない。


「ギギャ!?」

「グキキャッ!?」


影からある程度離れた辺りで俺とディンが動いた。

俺とディンはゴブリン目掛けて飛んだ。そして俺は下に落ちる勢いで漆黒の剣士の時に創造した剣で一体のゴブリンを頭から一刀両断し、ディンは持っている槍を下に向けてもう一体のゴブリンを頭から突き刺す。ゴブリン達は即死だった。


(ディンのあの槍で穿つ速さ……槍属性を持っているのか?)


あの速さ、あの槍を使ってのジャンプ、どれも並の槍使いには出来ないことをディンはした。そうなると、ディンが槍属性を持っている可能性が高い。敵になれば厄介だが今は味方だ。これだけの強者がいればとても心強い。


「フ、てめぇも同じことを考えたみたいだな」

「そのようだな」


どうやらディンもあのゴブリン達を仕留めようと思っていたらしい。俺とディンが狙っていたゴブリンが違っていて良かった。二人で一体のゴブリンを殺るなんて効率が悪いし殺りにくい。


「貴方達、誰?」

「貴方の味方ではない者だよ、黒幕」


さっきの粉をふりかけてゴブリンを増やしたところを見れば奴が黒幕だということは明らかだ。


「……てめぇ、翼竜族よくりゅうぞくか」

「へー、私の事知ってるんだ」


翼と尻尾に人型ということでリザードマン辺りかコスプレイヤーと推測していたがまさかの魔物でも人間でもないとは……。


「て言うか、翼竜族って何?」

「……とことん貴方は知らないものが多いですね」

「全くその通りだよ」

「すみません、これが終わったら最低限勉強してきます」


……て、おい!さりげなく俺に死亡フラグっぽいものを建設させるのは止めろ!

いや、言っちゃった俺も悪いんだけどね!?


「翼竜族、通称使いの竜人。竜の頂点である神竜の使いと言われている種族です。特徴は人の体に竜の翼と尻尾、鉤爪や鱗があることです。でも、何故そんな種族がここに……?あ、逆鱗もあるので注意してくださいよ?」


今の特徴と目の前にいる翼竜族を照らし合わせると確かに特徴通りだ。確か、竜の逆鱗に触れるとその竜が激昂して触った者を即座に殺す……だったか?


「貴様の目的はなんだ?」


ディンが目の前の翼竜族なに向かって質問する。

ディン君、てめぇか貴様かのどっちかに絞って相手を呼ぼうよ。


「……貴様じゃなくて私の名前はレナよ。レディに対して失礼じゃないかしら?」

「んなことはどうでもいい、早く目的を言え」


翼竜族——レナの言うことを完全無視して本題に入ろうとしているディン。

おいおいディンよ、さっきまでのキャラが少しばかり壊れてきているぞ?


「……貴方は返事の一つも出来ないのかしら?」

「んなことはどうでもいいって言っているだろ!」


ディンがレナに向かって怒鳴った。流石にあそこまで怒ることないだろ。


「はぁ……いいわ、教えてあげる。けど……


私に勝てばの話だけどね…?」


その瞬間にレナの体から赤黒いオーラが溢れ出てる。

ディンとエレナが見た時に体が黒く見えたのはこれが原因か!


「「「「っ!?」」」」


これまで感じたことの無い程の殺気が飛んできた。間違いなくレナは最初から本気で来るつもりだ。


「貴方達は何処まで耐えられる?」


赤黒いオーラの中から真っ赤に目を光らせながらレナは言った。

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