まさかの再開


「シロさん、報酬の銀貨十五枚を受け取ってきました」

「ありがとう。ところで、あのゴブリンメイジの魔臓について何か言われたか?」


あれだけの変化があったからには魔臓にも何かしら影響があるはずなんだが……。


「それが……何も言われなかったんです」

「え!?」


あれだけの変化があったのに何も影響がなかっただと?じゃあ、あの魔臓の禍々しい感じは何だったんだ?


「一応あのことは報告しましたが、多分調査をしてくれることはないと思います」


ま、そうだろうな。この町は初心者の冒険者が集まるから心配性の受付の人が多いレジェスとは違って、何故か証拠がなければ動かない。

まるで俺の世界の……言わないでおこう。


「とりあえず、今は様子を見るしかないね」


俺に背負われているエレナが言った。

確かに、エレナの言う通り今は様子を見るしかない。

ここで下手に動くとこの町の人達に怪しまれかれない。


「あのゴブリンメイジの狂戦士化の話は今は置いといて、今は——」


きゅぅぅぅぅ


「………」

「……あの、ご飯食べませんか……?」


お腹が減ったのか、リアラは可愛らしい腹の音を鳴らして食事を提案してきた。

初めて『ぐぅぅぅ』以外の腹の音を聞いた。


「シロさーん、私もお腹がすきました〜」


リアラだけではなくエレナも腹が減ったらしい。

そう言えば俺も腹が減ってきた。そして、今の時間を見てみると午後七時半。


「そりゃ腹も減るわな」


昼ご飯は少量だったので腹が減るのは当然だ。


「じゃあ、どこかに食べに行くか」

「そうですね」


そして俺達は宿ではなく飲食店を探し始めた。


************************


「ここでいいか」


俺達が見つけた店は『フォックス』という名前だ。

えっと……狐でいいのか?


「早く中に入りましょうよ!」

「あ、あぁ、悪い」


名前について考えていると店の前からリアラの少し怒りが混じったような声が聞こえた。

リアラは怒らせたくはない。怒らせたら一体何をされるかわからないからな。


「何か言いましたか?」

「イイエ、ナニモ」


俺は自分の考えていることが顔に出やすいことを忘れていた。今後はマジで気を付けなければ。

そんなことを考えながら店に入った。


「いらっしゃいませ!」

「何でまたお前なんだァァ!?」


店に入った瞬間に店員に向かって叫んでやった。

なぜなら、今目の前にいる店員がレジェスの町のフラデンにいた、見た目は漢、性別は女性、その名も…誰だ?

兎に角、その店員がいるのだ。


「あれ?あの時のお嬢さん達じゃない。何でここにいる?みたいな顔をしてるわね?」

「お、仰る通りです」


もしかして、と思い店の中を見てみると…


「はぁ、やっぱりか……」


店の中は男の見た目をした女性の店員で溢れていた。

またこの地獄絵図を見ることになるとは思わなかった…。


「まず、この店はこの世界の各地にあるわ。それで私はここに移動してきたってわけ」

「……マジですか」

「マジよ」


こんな店がこの世界の各地にあるなんて…ただでさえ二度目ということで運命さえ感じてきているのにこの流れだと町でご飯を食べに出かける度にこれと同じ店に来るかもしれない。


「まぁ、二度目のご来店のお嬢さん達と初めてご来店のお嬢さん、ごゆっくりしていってくださいね♡」


……どうしよう、今とてつもなく寒気がした。

リアラとエレナはどんどん食べていったが、俺はこの寒気が原因であまりごはんを食べられなかった。

二人とも、どんどん食べるのはいいが今払える分を考えて食べてくれよ……?


そんなことを心配しながら、俺達は夜ご飯を食べた。

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