第50話
眩しいほどの青空。
太陽の光を反射し輝くシフォニア国が誇るシフォニア城は今日も人々を魅了する。そして、この活気あるシフォニア王国王都に負けず劣らず、城内の廊下に大きな怒号が響く。
「くっそが!!あいつどこに行きやがった!!」
「....キースさん。城内でそんな汚い言葉を使わないでください」
「うるさい!俺は生粋ナカルタ人だ!城内もクソもないわ!」
「.....貴方、元シフォニア国民でしょう」
バタバタと早歩き──ほぼ走ってるに近い──をする、キースベルトとメニエル。この慣れた言い合いをしつつも2人はキョロキョロと周りを見渡していた。
「あ!いましたよ」
「どこ!?あ!あんなところに!!」
メニエルが指差した先には1人の男が窓の外を眺めていた。赤銅色の髪を一つに結びこちらに背を向けている彼だが、2人にはそれが誰なのか嫌でもわかるのだ。
「ランスロット!!」
「....なんだもう見つかった」
名前を呼ばれて振り返った彼は、いたずらが見つかった子どものような声色を紡ぐ。その態度にため息をついたのはメニエルで、ブチリと何かが切れる音をさせたのはキースベルトだ。
「あほか!毎度毎度フラフラとどこかに行って探すこっちの身にもなれ!」
「別に頼んでいないが」
「お前じゃなくてエレとロイに頼まれてんだよ!こっちは」
「そう怒鳴らなくても聴こえている」
キースベルトの叫びを飄々とかわす。世話をしているのはこちらなのに、はぐらかしたようなその態度が気にくわない。キースベルトは心の中でこの男の婚約者の名前を唱えた。いい加減、男の堪忍袋の限界を察知したメニエルが2人の間に割って入る。
「ですが、そろそろ反省してください。私の能力を迷子探しに使わないでいただきたいですね」
「はは。すまない」
「それに」
メニエルは一瞬だけ言葉を止めて、少しだけ躊躇した言葉を発した。
「まだ、お身体が戻っていないんですよ」
ランスロットはメニエルの言葉に、無言でくるりと向き直った。マントがヒラリと揺らめくと、彼の右手には真新しい杖が握られている。
あの毒の一件はすでに二ヶ月前の出来事となっている。主犯格だったイーダ・ラド・ソフィアは殺人未遂の罪で投獄された。以前エレーナを誘拐した罪も公となり一生太陽の下を歩けないという話だ。自業自得である。
そしてあの後駆けつけたダダイによって、イーダの持っていた毒がダバオラという運動麻痺を起こす種類の毒であると明らかになった。キースベルトの迅速な処置と、エレーナの服薬判断は的確で寧ろ称賛に値し、お咎めはなかった。ダダイの持ってきた解毒剤によりランスロットは一命をとりとめる。
しかし、ランスロットを蝕んだ毒は彼に後遺症を残したのだ。
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