第40話
「あんたがなんでそんなに幸せそうなのよ!高そうなドレスを着て、良い化粧して!貴族らしい生活なんて!!あんたに似合わないのよ!!」
ギラギラとした憎悪を込めた瞳をこちらに向ける。その気迫にエレーナの喉がヒュッと鳴った。
「お母様もそうよ!お義父様が屋敷に来ると女の顔になる!以前はあんなにわたくしの我儘を聞いてくれたのに!!今ではあんな
ダダイはあの後、妻であるネアの元に時間が許す限り会いに行っている。それにより粗悪だった夫婦関係は以前に比べ良好であると時々交流している手紙でも書いてあった。ああそうか、ダダイの行動はネアに届いていたのか。頭の片隅でエレーナはホッと胸を撫で下ろした。しかし、それによってイーダに向いていた愛情がダダイに向いている。敏感に察したイーダがそれにより不満を有しているのか。
「お金持ちになるの!良い男捕まえて何不自由なく暮らすために!....あんたさえ居なければ!!私がクレメンス家に嫁ぐ筈だったのに!!」
そこまで言ったイーダははたとなにかを思いついたようにおし黙る。そしてニヤリと笑うとエレーナに満面の笑みを浮かべ猫なで声で話しかけてきた。
「ねぇ、今からでも遅くは無いわ。ランスロット様との結婚を私に変わりなさいよ」
「え?」
「ねぇ、あなた今までだけでも十分いい待遇を受けてきたわよね?もう十分よね。次はわたくしの番よ。変わりなさい」
さぞ素晴らしい案だと言うように笑うイーダの姿を見て、エレーナの背筋が凍ったように固まる。ギュッと唇を結び、意を決したようにゆっくりと開いた。
「それは、無理です」
できるだけはっきりと、明らかな拒絶を示すためにエレーナは強い口調で答える。イーダの笑みが瞬時に消え表情が無くなった事に気付き、その瞬間今までの報復を思い出しグラリと視界が揺れた。だが、エレーナはそれでもその恐怖に負けるわけには行かなかった。
イーダの目を一心に見据える。大丈夫。私にはランスロットがいる。何があっても手離さないと約束してくれた最愛の人だ。そう心だ唱えるだけで誰よりも強くなれる気がした。
「いくらイーダのお願いでも、たとえお父様や殿下の命令だらうとも、私はランスロット様の隣を譲るつもりはありません。」
「....なんですって」
「私は彼の妻として人生を生きると決めています。他の誰にも譲れないし、譲らない」
エレーナにとってこれが一生で一番の確固たる願いだ。他の何を失っても「ランスロットの妻」という存在意義を失いたくない。それだけだ。
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