第387話 らしく描く。

 隠遁者らしく、気だるい午後には絵を描きます。

 にゃんこを描こうとするんですが、紙とペンを持って構えてると、なぜかスコちゃんがキョロキョロきょときょとして落ち着いてくれない。

 なので、10枚くらいは粘土の置物みたいなふにゃふにゃのクロッキーになったりします。


 うーん。

 絵のモデルは若くない人の方がいいんだよな。

 長時間動かないでくれるような人がいい。


 というわけで、祖母にスケッチをさせてもらいました。

 二十年前にも同じことをしていたのですが、そのときは顔の一部分だけを観察、クローズアップするにとどまり、その美貌を映しきれませんでした。

 祖母は女優さんのようにうつくしいので、二十年後もすてきな額つきをしています。


 わたくしの目指すところは、骨格をしっかりと。

 陰影をはっきりと。

 しかしそれでは顔のしわがありありと出てしまう。


 そういうときは光のマジック。

 顔面に光をあてて、顔の陰をとばします。

 4K、8Kの時代だもの、それくらいのテクニックは、ねえ。


 でも、わたくしは目に映るものをそのまま描くほうなので、似顔絵とかはあまり向いていない。

 モデルさんが望むようには描けない。

 祖母もちょっと気を悪くしたみたいで、早めに床に入ってしまいました。


 ごめんね、次はもっとうまく描くから。

 またモデルになってね。






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