第347話 あきらかに・・・
時々過去の記憶がよみがえり、頭を占拠してしまうことがある。
それは時間の観念がまったくない、という自分の性癖。
それによって巻き起こったすべてのトラウマである。
幼児の頃からわたくしは待っていた。
保育園で、絵本や紙芝居を楽しみながら、いつしか真っ暗闇になるまで、母の迎えを待っていた。
そこに不満は一切なかった。
小学生になって、算数だか何だかの時間で、初めてアナログ時計の読み方を習った。
それがどうした、という感想だった。
観念上の時間とは別の時を過ごしていた。
中学になって、部活に入った。
朝練の時毎回5分遅刻した。
わざとではないので罪悪感があり、その分練習に打ち込んだ。
こんなわたくしだが、友達が増えた。
その友達が、待ち合わせの時に時計を見ながら「一分遅刻するごとに10円ね」と言って、矯正しようとしてくれたが、なかなかもたもたする癖が抜けなかった。
マイペースでいけよと言われて、真に受けていた。
高校に入って、初めての課外学習時、小学生の時以来、部活で忙しくて踏み入ったことのない繁華街で待ち合わせがあった。
遅刻癖は自覚していたので、待ち合わせの2時間早く繁華街についた。
しかし、道に明るくないために待ち合わせの場所にたどり着けず、結局4時間さまよった末に家に帰って寝た。
普通ならそれっきりの記憶のはずだが、高校では後からクレームが来た。
「私、あなたのこと2時間待ったのよ」と。
ごめん、そのころわたくしさまよってました、と言えばよかったのになぜか押しに負けて言えなかった。
さらに、学年が進んでできた友達に「時間は守ろうね」と言われて卒業式のアルバムにすら同様に書かれた。
たった一回の失敗で、最後まで社会不適合者扱いされた。
約束をしたのでもないのに、友人ヅラして2時間待ったと言いふらしてくれた自称親友は、その後ショッピングの約束をしたのに6時間待たせてくれた上に、約束自体を忘れていたので永遠に縁を切った。
大学を卒業した後になってその自称親友が電話してきたとき、わたくしはお風呂場で泣いた。
あんなの親友じゃないわと直観が言っていた。
すぐにでしゃばって、キャンキャン喚く彼女は「セックスは大事」と言っていたのに、初めての彼氏を「飽きた」といって捨てたと吹聴していた。
ここに至ってわたくしは気づいたのである。
わたくしが時間を守らないのは、相手を尊敬できないからだ、と。
大事にしたいと思える相手ではないから、無意識にぐずぐずしてしまうのだ。
そう考えると本当に、いやな人間とばっかりつき合ってきたなあと思う。
もっと自分中心に、自分のやりたいことを中心に据えて、自分の時間を大切にするように努めよう。
そうすれば、時間は有限であり、大切なものなんだと実感できるはずだと思う。
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