第293話 夏の奇々怪々。でも虫の鳴く季節。

 旧暦ではとっくに秋。

 近所では、木立の中で鳥がギュイギィと鳴き、ツクツクボウシが鳴きたてる。

 そして、かすかにキリギリスの鳴く声も聞こえる。


 アメリカ人には雑音にしか聞こえないそうだが、日本の虫たちは雄弁に季節の移り変わりを歌っている。

 遠くでカラスも鳴いている。

 パラパラとブドウの葉に雨がしたたり落ちてくるのを、おや、と思って聞く。


 台風が来ているらしいから、ここいらへんも影響を受けているのだろう。

 今年もブドウの実は、獣に食べられてしまったらしいと母は言っていた。

 夜中にガサゴソ音がするから窓を開けたら、ずぼっとしっぽと後ろの片足がのぞいたが、あれはネコだった気がする。


 ハクビシン? そんな田舎でもない。

 タヌキ? 少し前に見かけなくなった。

 やっぱり、ネコがブドウを食らうのか……? 考えられない話でしょう。


 どうなっているのだ。

 奇々怪々。

 ネコってブドウを食べるのかなあ。

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