第217話 世界で最も幸せな国、国民が幸せな理由

 フィンランド人のまねをして、朝から冷たいシャワーを浴びてみた。

 なんでもフィンランド人は朝っぱらから、氷水につかる習慣があるそうだ。

 で、結果がどうかというと、うん、悪くないんじゃない?


 服を着た後、なんかホカホカしてるし、さっぱりした。



 こんなときになんだけれど、チャオチュールを買いたくて、気だるい体を動かして、隣町まで歩いて行った。

 途中、森林を歩くイメージを思い浮かべようとして、路面ばっかり見ていて、ちっとも森林のイメージがわかないのだった。

 黒い毛皮を着た麻呂眉のチワワの赤ちゃんが、チャオチュール買うのはやめて、さっさと帰れ、死ぬから、ときれいな瞳で言ってきた。


 ばかな。

 明後日わたくしが死ぬって? そうかもしれないし、そうでないかもしれない。

 だけど、わたくしはチャオチュールを、スコちゃんに食べさせてあげたいのだ。


 きれいな瞳のチワワんわんこは、視線をそらし、ならどこへもよらずにチャオチュールを買ったら帰れ、と言ってきた。

 そうか。

 ああ、そのつもりだ。


 しかし、ペットショップは閉まっていた。

 考えてみればあたりまえだ。

 こんなときに、どういう酔狂な客がくるというのだ。


 わたくしだ。

 しかし、閉まっていた。

 どこへもよるなと、きれいな瞳のチワワんわんこの声がしている。


 帰る途中で催したので、こころで犬の神様への忠誠を唱えて、マルエツの二階へ上がる。

 用を足して、ふと思い立って、レジに並んだ。

 聞いてみたら、ペットフードが奥のエスカレーター前に置いてあるそうだ。


 ナイス! チュール置いてあるかも! 期待を大にして、棚の間を進みゆく。

 ある! しかも年齢別に、味の種類も豊富に……天国や!

 めっちゃ買ったろ。


 買いました。

 帰りの坂道がだるい。

 なぜか息も切れない。


 思えば、息が切れるほど勢いをつけて歩いてない。

 すべてが、かったるいのだ。

 筋肉が衰えてるな―……。


 しかし、チャオチュール20個入りと13歳用のおやつ缶詰70gとクリスピーキッス大袋。

 これを……わたくしの大事な、スコちゃんに……。

 それだけ思って道を乗り切った。


 昨日あたりから、体がだるくて、のどがイガイガして、咳もくしゃみも、寒気もしてるのに、熱がないから薬も飲めない。

 せいぜいトローチをなめて乗り切れと母が。

 弱ったなー。


 こんなに弱体化してるところへ、結核だのコロナだのにこられたら、抵抗できない。

 あっという間にあの世ゆきだ。

 頭も重いし、視神経が疲れている。


 だからというわけでもないけれど、失敗したデジ画をやり直す気が全くしない。

 知らなかった。

 わたくし、ひきずる性質なのね……失敗すると熱血できない。



 スコちゃんにチュールをあげたら、おしまいの方でぴゅっと勢いよく飛んだので、スコちゃんの毛皮にくっついてしまった。

 手で取って、彼女の口元へ持っていくと、指先だけなめてくれた。

 でも、そのあとで、大量の水を飲んでいたから、塩分が多いのではないかと心配になった。


 シニアおやつを開けて、スコちゃんの残したモンプチ、ナチュラルと黄色のブレンドに混ぜてあげた。

 ちゃぐちゃぐと食べてる横で、母が用意してくれたおかかおむすびとはんぺん、トマトを食べる。

 スコちゃんと同時に、食べ終わったのだった。


 休みも入れずに、昨日の続きの読書をした。

 正確には、昨日読んだ箇所をノートにまとめた。

 適当だけど。


 倦怠感が抜けない。

 これじゃ、病気でなくても死にそうだ。

 95歳の祖母と変わらない暮らしをしていていいのか?


 いや、まずいだろう。

 なんとか、体力を取り戻さねば。

 しかし、心身ともに、疲弊しているのは確かで……ああ、牛乳でといた青汁が甘い……。






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