第48話 おののく

 1、2ヶ月前くらいに、大熊ゆうご先生の漫画の魅力にたまらなくなって、禁断の描きうつしをしてしまったものがある。

 本棚の上に貼っておいたんだけど、なんかちがう。

 我ながらすらすら描けたんだけど、萌えない。


 もともと、自分で描いたものには反応しない自分である。

 こうなるのが怖くて、模写はしないようにしてたのに、ロックが素敵で、もう我慢がきかなくなってしまった。

 しかし。


 見るたびに、何か違うなぁーと思ってはきたが、それでもそっくりなんである。

 そっくりに描けたのに、不満足。

 ということは、どこか違うのだ。


 昨日ついに漫画と並べて二つを観てみた。

 うーん。

 大熊先生のロックのほうが、美しいわ。


 なぜだろう。

 なぜだろうって、プロなんだからあたりまえなんだが、わたくしは具体的に知りたいと思った。

 で、よく見てみた。


 顎が……漫画のほうが華奢である。

 目尻がすっと抜けている。

 頭の丸みがよく出ている。


 これぞ、手塚漫画っていう感じなのだ。

 わたくしのは、タラシかそのへんの美形のお兄ちゃんがいい気になってポーズ決めてるようにしか見えない。

 つうか、骨格が違う。


 ディフォルメが違うのだ。

 わたくしの模写は気持ち悪い。

 ロックの酷薄さと色気が出てなくて凡庸すぎる。


 わたくし、絵の世界にいかなくて正解だったわーと、今更ながら自分の判断に満足した。

 だって、キャラクターがわかってないもん。

 なぜ、対象がそういうポージング決めてるのかが、わかってなさすぎだもん。


 ロックは宇宙人のように頭がよく、猫のように執念深く、蛇のように残酷なのだ。

 こんなのんびり間延びしたキャラじゃない。

 わたくしは、自分の模写を憎んだ。


 そしてまた一つ学んだ。

 キャラクターを理解することが、なにより重要なのだ、と。

 これは教訓として、小説に生かすつもりである。

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