この物語のヒロイン、リディアは受動的な性格です。様々な問題が発生しますが、状況に流されがちで、昨今の流行りの逆境を跳ね除けるヒロインとは真逆な対応。
古臭い女性を貶めているような文化に囚われている所もあり、それが不快で読むのを止めてしまう方も多いかと思います。
でも、待って欲しい。
どうか、最後まで読み進めていただきたい。
そんなリディアの性質こそが、問題解決の鍵なのですから。
ヤラれっぱなしって、ムカつきますよね。やり返す方がスカッとしますよね。
自分で自分を守る。それが正義、と言うのは正しいでしょう。
けれど、耐え忍ぶのが悪かと言われたら、それは違う。
受動的なのも、辛抱強いのも、ただの性質であって良し悪しではない。
己の性質をどう扱うか。どんな性質にも良い面と悪い面が同時あり、どちらになるかは本人次第。
そんな当たり前な事を、この物語は思い出させてくれました。
造り込まれた世界観、本格派ファンタジー、癖の強いキャラクターも、この作品の魅力です。
少々長く、読み込むのに労力は要ります。
けれど、それを後悔させないだけの面白さがあります。
自信を持ってオススメ出来る作品です。どうかご一読ください。
※ただし、作中に虫系の魔獣が登場します。虫が苦手な方は無理はなさらぬよう、ご注意を。
くっ……。ひとこと紹介にもっと要素を詰めこみたかったのですが字数が💦
ともあれ、学び舎の体制がとんでもない中。
どこか天然なのに常識人で実力がある先生——それと癖の強い生徒たちの関係図がおもしろおかしいです。
相手を知らないところからはじまり、虚をつかれ、ほだされはじめているのに、かみ合ってない感がなんともいえません。
この女子。がんばって先生に徹しようとしていながら、生徒キラーのもよう。
重厚そうな影を匂わせながら、物語の紡ぎ手の感情に乗せ、軽快なテイストでユーモラスにまとめてゆく——
読み手に負担をかけない。こんな書き方もあるのだな……と。勉強させていただいております。
物語が始まった時、ヒロインであるリディアについて、情報はあまり明かされていません。
特級魔法師であるリディアは、世界で唯一、蘇生魔法が使える存在。
ある事件がきっかけとなり、大学の助教となり、それぞれに個性の強い、そしてどこか既定路線からはみ出し気味の学生達を指導することになります。
このリディアという女性が何者なのか?
少しずつ状況が明らかになっていくにつれ、この問いこそが、物語を解く大きな鍵になっていることに気づくでしょう。
過去を変える、物事を変える、何かを避ける、そう意図しながらも翻弄される登場人物達。
結局、今自分が、<この瞬間>にできる最善の選択を信頼して、運命を切り開いていくのだ、ということを教えてくれているような気がしました。
300話を超える、長い物語です。
にもかかわらず、この『リディアの魔法学講座』は、始まりの物語なのかもしれません。
同じく、リディアを主人公とした『図書館都市のリディア』という作品も公開されています。
緻密に作られた魔法世界、超リアルな人間模様、そして辛くても、困難にあっても自分を曲げないヒロイン、作者の創り上げた世界を楽しんでください!