第15話 少女の羽

「……この娘、いや、この方は神様なんですか?」


 驚いて、馴れ馴れしく肩を抱いてしまった手を離す。

 反動で少女の体は、地面に打ち付けられた。


「ああ、ごめんなさい」


 衝撃にも関わらず、少女は起きない。

 見たところ怪我をしている様子はないが……。


グオォォォォ……。


 突如、巨体が空から、横から縦横無尽にこちらに突進してきた。

 少女神の出現で一瞬忘れていた存在-大蛇の首が一気に襲い掛かってきたのだ。

 非力な少女が存在している、すなわち、そこは安全だと思い込んでいた。


「うわ、だから来たくなかったんだ!」

「貴様、それでも防人か! 神の御前だぞ! 盾となり死ぬのが本望くらい言えないのか!」

 

 早速悲鳴を上げる天地に、永山先輩が叱りつける。

 とっさに長刀を構えるが、やはり為すすべはない。


 大蛇にとって僕ら防人はまるで眼中にない。

 先ほどのように建物や人間を破壊することが目的ではないようだ。

 僕たちの動向に反応する気配はなく、ただ一直線に少女に向かっていく。

 

 タイミング的に少女の前にいた僕は、思い切り大きな頭に薙ぎ飛ばされた。

 

 「待て!」

 永山先輩と紫草先輩が長刀を振りかざす。

 しかし、やはり効果はまるでない。

 まとわりつく蛇頭の1つが、永山先輩に向けて火を放ち、その勢いに呑まれた先輩は、紙人形のように吹き飛ばされた。助けようとその蛇頭に長刀を切りつけた紫草先輩も、他の蛇頭の口に捕捉され、地面に叩きつけられた。  


 僕たちは結局障害にすらなりえないとでも言いたげだ。

 大蛇は少女神をその頭にのせると、別の頭で体を固定させ、ゆっくりと

のたうちながら、もと来た道を戻っていく。


 この様子だと、静かにしていれば、駅地下に逃げ込んだ客たちには危害を加えないだろう。だがあの少女神は……?

 

 慌てて外に出ると、上空にあるヘリが所在なさげに飛び回っているが、大蛇を攻撃しようとはしない。さもありなん。大蛇を攻撃して民間人を巻き添えにしてしまえば、それこそ取り返しがつかない。地上からも、武装した警察が、並走しながら追尾している。


 紫草先輩をはじめ、ぱらぱらと防人や駅員たちが様子を見に来た。

 先ほどの大蛇の襲撃後、表がどうなっているのか気になったのだろう。


 その時-。


「何をやっている! なぜ助けられなかった!」


 「導きの神」の叱咤の声が響いた。

 

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