第9話 ノアの回想

その日は、よく晴れた日だった。


俺は彼女を連れて、師匠の元へ向かった。既に彼女へのプロポーズを済ませ、師匠には披露宴への参加を求めるために向かったのだ。


師匠の様子は少しおかしかった。目にはくまができ、気力がないようだった。


「なんであいつは……」


まだ師匠は言っていた。


結婚を決めたことを話すと、急に彼の目に明るい光がこもった。


「お前…の……!」


そして、目の前が真っ暗になった。


次に目が覚めたのは、師匠の地下室の中。鎖で繋がれていた。


目の前には、椅子に座る彼女と、奥の机に向かっている師匠の姿が見えた。


「何をするんですか、師匠!」


師匠は振り向いてこう言った。


「何を……?決まってるだろ!お前を……殺す!」


「っ!」


「もちろん俺は直接手を下さない。こいつにやってもらう。……やれ。」


彼女はその言葉で立ち上がった。


「嘘……だろ……。」


なぜ彼女が俺を殺そうとする?


「それはな、俺が人形にしたからだ。そう言う力を得たのだ!」


師匠、いや、奴は俺の心を読んだように言った。


………人形にした?


考えてるうちに、彼女が長くなった爪が俺に斬りかかる…!


痛みを覚悟したが、耳にきた音は鎖の切れる音だった。


「に…げて……は、やく……。」


その言葉を聞くなり、俺は逃げ出した。


「まだ完全に制御できないか。」


その声が最後に耳に届いた声だった。

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