シスコンレベル1

1話 黒歴史は夢にも出る

「わーーー!!!」


 あまりにも恥ずかしくなって思わず叫び声をあげてしまった俺は、耐えきれず続けざまに突っ込みを加える。


「言われてみればプロポーズにしか聞こえないじゃん!!!」


 寝ていた俺はその夢によって飛び起きたのだが、恥ずかしさのあまりに再び布団をかぶった。


 突っ込むべき相手はいない。

 いや、居るとしたら……ここにいる。

 俺自身だ。


 先程まで、俺は過去の記憶を夢に見ていた。


 前世での、俺の……魔王の記憶だ。


 昔の俺が、恥ずかしげもなく「お前が欲しい」などと勇者に向かって発言したのである。

 しかも勇者って男じゃないのか!?

 爆笑されても可笑しくない、いや、しない方が可笑しい。

 しかも、俺もだが勇者も毎回昔の記憶を引き継ぐようだ。

 来世以降も永遠に残る可能性の高い恥である。


 俺は度々黒歴史じみた過去を思い出す度に悶絶しそうになる。

 中でも夢で見るものは、ふとした瞬間に思い出した記憶よりも印象が強烈で、鮮明に描かれる代物に絶叫したくなる。

 と言うかしている。


 何格好付けてんの、過去の俺は。

 なんで思い出したの、今の俺は。


 そうやって布団にうずくまってゴロゴロ転がっていると、ふと、扉が閉まる音が静かにした。


 うん、気づいてた。

 あまりにも突っ込まずには居られなくて、でも突っ込んだあとで気づいた。


 俺の部屋のカーテンを空けるためにやってきた女性が、最初から最後まで無言を貫き部屋を出ていったのだ。


 今の俺の状況は端から見てどう思えるものだろう。


 自分で言うのも何だが、幼い子どもの寝言が「プロポーズじゃん!」とは如何なものか。

 しかもそう叫んでもんどりうつ様子は第三者のそれには見えないだろう。

 どれだけませた子どもだ。


 あらぬ疑いを招きそうなので弁解させてほしいが、いまから追いかけて説明するのも恥ずかしい。

 さらに、彼女なら聞かなかったことにしてくれていると思うので、弁解してもおそらくはぐらかされるだろう。

 そうなったら墓穴を掘ったようで、より恥ずかしくなることは目に見えている。


 そうして俺は早朝から、過去と現在、二重の意味で悶えるのだった。

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