魔王の星の次の魔王

作者 十龍

【良作】公務員はいつも人々の良い的だ。それが魔法世界の魔術師であっても

  • ★★ Very Good!!

魔術師の公務員、ということでかなり期待をもって読ませていただきました。

最初から謎の魔力の波動から始まり、混迷を極める所内の中、ひっそりと密命を受けた平社員は実はかなりの実力者だった――というのは中々にグッと来ます。育ちもよく趣味半分の薬草調合術も良いエッセンスとなって物語に溶け込んでいます。

また主人公の魔法バトルについても中々面白い。都合上数ターン程度の戦いではありますが、文章力がありほう、と楽しめるものでした。

ただここは辛いかな、というところは散見されます。

まず一つに、世界観が定まっていないこと。今のところ近代技術と魔術文化が並行して存在しているものには思えますが、冒険者たちの描写と文明レベルが中世以下。主人公の職場と最前線の描写も相まってとてもチグハグしています。

次に20話あたりからストーリーが完全に停滞していて、とてもダレているところ。展開も平坦でさっさと村に行けば良いのにと思い、ここで読者が離れてしまうのはとても惜しいと思います。さらに言えばこのあたりで主人公の公務員魔術師であるというメリットが完全に霧散しています。

最後にいちばん大切な第一話で世界説明からスタートしているので、1話切りがとても多いのではないかという懸念。半分くらいなら全然許容範囲内ですが、それ以上に人が離れているならばこの話を主人公の動きのあるシーンに差し替えないと、せっかく糸を紡いだような丁寧な世界も読まれずじまいで終わってしまいます。それはがとても、とても惜しい。

ただそれでもゆっくりとどこか懐かしいハイファンタジーでありながら、肩身の狭い、だけどメッチャクチャ強いという今流行りの理想像を描いている本作はとても魅力的。続きを楽しみにしています。

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