迷い猫ならぬ迷い人

まだ幼い頃、捨て猫を1度だけ見つけたことがある。

放課後キャッチボールをしにいく公園の隅の大きな木の下で

真新しい段ボールに、真新しいタオルに包まれて

懸命に鳴く姿を友人と見つけた。


自分の家では飼えないことは知っていた。

友人も連れていけないと言うので

近所の家という家のチャイムを鳴らしては

「この子、飼えませんか?」

夕暮れ時が過ぎても飼い主を捜していた時のことを

ふと、二人分のコーヒーをいれながら思い出した


春先の少し肌寒い夜、仕事が終わって帰宅すると

迷い猫ならぬ迷い人が、赤オレンジ色の金魚が入った

透明なビニール袋と大きめのかばんを持って

僕の住むアパートの玄関前で座っていたのは

ほんの5分、10分前の出来事だ。



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