ep8-6
「はぁ~~、ソニアは可愛いなぁ~~」
なでなでなで
湯船に胸元まで浸かったマミヤが、足の間に座らせたソニアを背中から抱き締めている。
「うわぁあぁあ、おやめくださいぃ~」
ぐわんぐわんぐわん
マミヤに豪快に頭を撫でられて目を回すソニア。
そんな2人の様子をツガルは穏やかな表情で見つめている。
「しかしだねぇ、ソニア。こんな可愛い姿になって帰ってきて、しかも恋人までこさえて来るなんて……。これではもう手出しもできないではないか」
ぐわんぐわん ギリギリギリ
ソニアの頭を撫でるマミヤの手に力がこもっていく。
「あいたたた…許してください、マミヤ。まさか貴方がわたくしにそんな気持ちを抱いていただなんて気付きませんでしたもの」
ソニアはマミヤの腕から逃れようとするが、助けを求めたツガルに押し返されてしまう。
「同感だぜ、マミヤ。ソニアときたら全く鈍感もいいとこだ。はっきり言わなきゃ伝わらないんだもんな」
「そ、そんなぁ~」
ツガルにも助け船を断られてソニアはブクブクと顔半分まで湯面に沈んでゆく。
マミヤはペットを可愛がるような慈愛に満ちた表情で満足げにソニアを可愛がった。
「そうだ、ツガル。私と結婚しないか? そしてソニアも一緒に3人で暮らそう」
「ちょっ、マミヤ!?」
突然のマミヤの放言にソニアは驚いて振り向く。
「もともと、王家に勇者の血を取り戻す為にツガルを養子にしたんだ。将来は私とツガルが結婚して王位を継ぐつもりだったんだよ。名目上は兄妹だから表立って婚約はしていなかったがね」
「そ、そうでしたの!?」
ソニアは初耳だという顔でマミヤを見つめるが、マミヤは毅然とソニアの目を見つめ返す。
「そのつもりでツガルに接してきたのだが、どうも伝わらなかったみたいだね」
マミヤの瞳に僅かに哀しみが宿るのをソニアは見た。
「おっと、いけない。湿っぽくなってしまったね。だから私としては当初の予定通りツガルと結婚したい所なんだ。中身は違えど、ツガルは私が惚れ込んだ唯一の男だからね」
マミヤはその目をツガルに向ける。
ツガルは視線を逸らさずに、しっかりと受け止めて答える。
「ダメだ。ツガルはソニアのもの、ソニアはツガルのもの。そこは譲れねぇ。悪いが、諦めてくれ」
ツガルの言葉に、マミヤはどこか安心したような表情を見せる。
期待通りの言葉が聞けた、とでも言うように。
「……そうかい。ハハハ、きっぱりと振られてしまったな。うん、むしろ清々しい。スッキリしたよ」
マミヤは腕の中のソニアを抱きすくめて、それ以上の表情は見えなくする。
ソニアにだけ聞こえる声で、
「気付いてもらうことを待たずに、ちゃんと伝えれば良かったな」
と洩らした。
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