ep7-6
「ふぅ、手ごわい相手でしたわね……」
ルキーニを下の階に落としたツガルは、剣についたままのトランプを再び炎で焼き払い、剣を納めた。
今しがた作ったばかりの穴から落ちないように慎重に廊下を進み、目をふさがれたグスタフから丁寧にトランプを剥がしてやる。
ビッ! ビリッ!
「ギャア! お、おお……目が見える、見えるぞ!」
「グスタフ、ご無事ですか?」
「ウム。まつげがごっそり抜けた気がするが、問題ない! ゆくぞツガル、ソニア姫は近い!」
本人は目の前にいるのですけれど、とは言えずにツガルもグスタフにならって廊下を進もうとした。
だが……。
「く、くふふ! あーあ、いけないんだぁ。ボクを本気にさせちゃったね?」
ジャキン! ジャキン! ガラガラガラ!
ツガルとグスタフがいた廊下の床が、階下から貫通してきたトランプによって切り抜かれ、落ちる。
「……っ!?」
「ぬわーーっ!」
ドスン!
落ちた先、下の階ではルキーニがトランプを展開して待ちかまえていた。
「これでおあいこだねっ! ボクひとり落ちるなんてカッコ悪いだろ? さあ、ボクにここまでさせたキミには、特別にボクの名前を教えてあげよう。ボクの名前はパルミジャーノ・ルキーニ! キミを倒す者の名さ!」
水色のエプロンドレスのスカートの両端をつまみ上げてルキーニは優雅に挨拶をする。同時に、スカートの中から追加のトランプが落とされルキーニの周囲に待機した。
「ならば私も応えよう! 私の名はグスタフ・ビンネンメーア、誇り高き内海の魔王ビンネンメーアの直系である!」
宝剣を抜き、黄金の鎧を煌めかせるグスタフ。
対するルキーニは殺気を削がれて呆れ顔だ。
「いや、キミの名前は聞いてないから……。どうせなら、そっちのお兄さんの名前を聞かせてほしいね」
ルキーニに呼ばれてツガルは剣を抜き応える。
「紹介が遅れました。わたくしの名はツガル・アイゼン。東国アイゼンの勇者の力を継ぐ者でございます」
「なるほどね、勇者か……。ボクも魔王のひとりとして見過ごすわけには……ってアレ? ツガル・アイゼン!? キミが? へぇー!」
ツガルの名を聞いてルキーニは急に何かを思い出したように笑みを浮かべる。
「な、なんですの?」
「元の体を、取り戻しに来たってわけだね?」
「……!? ど、どうしてそれを?」
「ホントのツガルくんから全部聞いたんだよ、ホントのソニアちゃん?」
ルキーニは心底楽しそうにニヤニヤ笑いを浮かべる。
一方ツガルは状況を掴みきれていない。
「ホントの……? もしかして、わたくし達の入れ替わりのことを……」
「うん、知ってるよ! でも安心して、ボクはキミたちの味方だから。ボクが絶対に2人を元に戻してあげるよ!」
そう言ってルキーニはトランプを操り、空中で固定させて階段のように組み上げた。
「さぁ、どうぞ。この先でソニア姫がキミを待ってるよ、自称ツガルくん?」
先ほどの敵対ムードが一転して急に馴れ馴れしくなったルキーニが、ツガルを階段へと導く。
不審に思いながらもツガルは階段を上ってゆくのだった。
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