ep6-15

「なるほど!

 魔王国の姫君であったキミがお見合いパーティーの最中に魔物に捕らわれていたところをお兄様が助けたものの敵の最期の魔術によって体が入れ替わってしまい、しかも入れ替わりの魔力回路は建物とともに崩壊し術者はお兄様に倒されたからもう同じ魔術を使うことができないため旅を続けていたところ、姫君の体に入っていたお兄様は魔王国に捕らわれてしまったという事だったのだね!?」

「今わたくしが申し上げた通りなのですがそれは……」

 ツガルはマミヤが話を理解するまで根気よくこれまでの経緯を話した。

 おかげですっかり日も暮れてしまっている。

 窓の外が暗くなったので侍従のオーマが書斎の窓のカーテンを閉ざした。

「今の話を全面的に信用するかはともかく、キミの言い分はわかったよ。要するにお兄様はキミの面倒事に巻き込まれたというわけだね」

「まあ、そうなりますわね」

「しかもキミは魔王の娘。本来であればお兄様が倒すべき敵ではないか」

「まあ、そうですけれど……貴方のお兄様は知らずに助けてしまったというわけですわね。それではむしろ自分から面倒事に首を突っ込んでいるような……」

「うぐ……、そ、それはだな……。お、お兄様は例え敵であっても困っている者は助けるという心が広い優しいお方なのだよ! いやはや、やはり私のお兄様は最高だな!」

「冷や汗かいてますけど大丈夫ですか、マミヤ様」

 中身は女同士の2人の、言葉の応酬が繰り広げられる。

 片や勇者国の王女、片や魔王国の王女。

 そのどちらもが、1人の男をめぐって互いを牽制している。

「しかしキミも魔王の力を継ぐ者ならば、入れ替わりを元に戻す魔力回路ぐらい作れるだろう? 早く元に戻ってお兄様を返してくれないか?」

「残念ですが今のこの体では無理ですわね。魔力がまるで使えませんもの。逆に魔力が豊富なわたくしの元の体に入っているあの方は、魔法の教養がまるでないので自分で魔力回路を描けないのです。こうなってはもう、他の方に手伝っていただく他ありませんわ」

「なんと歯がゆい……。お兄様の体はここにあるというのに中身が魔王の娘では手も出せんではないか」

「ちょっと今不穏な言葉が聞こえましたが! 聞き捨てなりませんわね、この体は今は私の物なのですよ。ふふふ、この体のことは隅々まで知っていますし、他の方に手出しさせるわけにはいきませんわね」

「なんだと! うらやま……けしからん!」

「この体は今や私の思い通りなのですよ。あんなことやこんなことも……!」

「え、ええぇっ!? ずる! ずるい!! お兄様がいないうちに私にも教えてくれ!」

「きゃーっ! ちょっと、どこ触って……! あっ、耳はダメ……!」

 マミヤがツガルを押し倒し、床の上ではしゃぎながら2人して転げ回った。

 侍従のオーマがそれを鬼(オーガ)の様な形相で眺めていた。

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