ep6-5
ツガルはマミヤから間合いを取る。ツガルの装備は兜だけだ。魔物と戦った時のようにあえて鎧で受けながす事も出来ない。
となると、一切の攻撃を食らわないように立ち回るしかない。
「…… (なんて、気軽に考えてもいられないですわね)」
ツガルが考え事をする間にもマミヤは走り寄って剣を繰り出す。ツガルはそのすべてを見切って、最小限の身のこなしで避けて、逃げ回っていく。
ツガルは自分の不利な状況を楽しんでいた。マミヤは確かに強いようだが、あくまで人間相手の訓練の話だ。それも、剣術の訓練相手として付き合ってくれる人間に対しての限定的な強さでしかない。
これが王宮に居る者と外で戦う者との差だとツガルは実感していた。
「どうした、逃げ回るばかりではないか。キミも斬り込んで来てはどうだ?」
歴然とした力の差を認められないマミヤはツガルの攻撃を誘う。しかし剣は後ろ手に構えて迎撃する構えを取っている。
見くびられていてばかりではツガルも楽しくない。逃げるだけの者と思われても不本意である。ここらで少しツガルの本来の力を見せてやろうかと、ツガルに悪戯心が芽生えてしまった。
迎撃体勢をとるマミヤから更に距離を取り、ツガルは剣を逆手に構えた。
「ムッ……? キミ、その構えは……」
マミヤはツガルの様子が変わったことを察する。しかし、迎撃の構えを崩さなかった。それがマミヤの判断の誤りとなった。
「スーッ、フーッ……。受けてみなさい。『流閃』ッ!」
息を整えたツガルが、魔物との戦いの中で身に馴染ませた剣技を披露した。
『流閃』は体ごと回転させた剣の切っ先から放つ衝撃波で離れた敵を討つ、対魔物用の技だ。
ズババババッ!
何体もの木偶人形を切り倒しながら進んで威力が抑えられた衝撃波がマミヤに直撃した。
「ぬぅ……ッ!」
吹き飛ばされたマミヤが地面に倒れて呻く。
フルプレートアーマーは表面を削られ、接合の弱い関節部分などは剥がれて吹き飛んでしまった。残った部分も地面に叩きつけられた衝撃で大半が崩れた。
「制御が難しいですわね……ええと、ご無事でしょうか?」
ツガルは自分の剣技のあまりの威力に驚いて慌ててマミヤに駆け寄った。
戦いのフィールドには入れない従者がものすごい憎悪をたたえた突き刺すような眼差しでツガルを睨みつけていた。
「くっ……くくく、なかなか、やるではないか」
鉄くずと化したフルプレートアーマーの残骸の中から、マミヤがヨロヨロと立ち上がった。
これだけの被害を受けて立ち上がれるだけでも、凄まじい体力だとツガルは純粋にマミヤを内心で讃えた。
汗まみれになった青いボディスーツがマミヤの体に張り付き、引き締まったボディラインが露わになる。マミヤが体に残った鎧の残骸を振り払うと、弾むように巨乳が揺れた。
「お、女~~~っ!?」
ツガルは今まで見たこともないような胸の迫力に目を丸くした。
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