ep6-3
「ツガル、おめぇの荷物はオレたちがもう運んで置いたぜ。お城ン中での生活は窮屈かも知れねぇが、まあ頑張れよ」
ツガルがアカシ団長と話をしている間に気を利かせてくれたのか、何人かの兵士が汗を拭きながら兵舎に帰ってきた。
兵士達は力比べでもしていたのか、ベッドが重かっただのチェストには中身が詰まっていただの言い合っていた。
「しかし、ツガルがマミヤ様の護衛になるとはな。王様も人が悪いぜ」
「まったくだ。おいツガル、お前にこそ護衛が必要なんじゃねぇか?」
「マミヤ様は王位継承権のゴタゴタでピリピリしてっからなー。せいぜい寝首をかかれないように気をつけろよ」
「怖くなったら帰ってきてもいいんだぜ? いつでも魔物だらけの国境警備にかり出してやるからな!」
ツガルを送り出す兵士達はツガルを怖がらせる様なことを言い、アカシ団長に拳骨を食らわされていた。
ツガルは軽く礼を言って兵舎を後にし、従者に連れられて新しい個室へと案内された。
「それではツガル様、支度ができましたら中庭へおいでください。新しい任務についてご説明いたしますので」
部屋に着くなり、従者はツガルを置いてどこか別の場所へ行こうとする。
それをなんとか引き止めて、ツガルは従者から色々と聞き出そうと試みた。
「あ、あの! わたくしの新しい任務とは何なのでしょう? 先ほど『マミヤ様の護衛』だとか聞こえたのですが」
「これはこれは、ご説明が遅れまして大変失礼いたしました。ツガル様には今後、マミヤ様の護衛としてこの城に勤めていただきます」
露骨に慇懃無礼な態度で従者は早口に説明する。どうもツガルはこの従者に嫌われているらしいと悟った。
「そのマミヤ様という方は、今どちらに?」
「この時間帯はマミヤ様は剣術の訓練をなさっています。護衛になるにあたっては、マミヤ様の日々のスケジュールは把握しておいてくださいませ」
これ以上は堪えられない、といった空気を隠すことなく従者は逃げるようにツガルを部屋に置いて去っていってしまった。
整理するほどの私物も持っていなかったツガルはすぐに手持ち無沙汰になり、マミヤ様なる人物の待つ中庭へと足を運んだ。
中庭ではフルプレートアーマーを着込んだ者が木偶人形を相手に剣を振っていた。訓練だというのにフルフェイスの兜まで被っている。
あれがマミヤ様だろうかとツガルは見守る。
「あら、ツガル様。そんな格好でマミヤ様の剣術のお相手をなさるおつもりですか?」
唐突に後ろから声をかけてきた従者に反応する間もなく、ツガルはフルフェイスの兜を被せられて突き飛ばされた。
実に容赦のない従者である。
なんとかバランスを崩さないようにと2歩3歩踏み出した所へ、フルプレートアーマーのマミヤが両手に1本ずつ剣を持ちガシャガシャと金属音を立てながら近づいてくるのだった。
一歩一歩踏みしめる様なマミヤの歩み寄りに、ツガルは凄まじい威圧を感じるのだった。
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