ep5-7
ソニアは言いようのない申し訳なさに押しつぶされるように顔を伏せた。
騙した訳ではないのに、自分の秘密を打ち明ければ叱責される様な気がしていたのだ。
しかし、ルキーニから掛けられた言葉はソニアを責めるようなものではなく、むしろ温情と理解に満ちていた。
「そっかー。ソニアちゃんも、そうだったんだね」
「えっ……ルキーニちゃんもなの?」
ルキーニはうなだれるソニアの頭を優しく撫でる。
ソニアは、ルキーニも今のソニアと同じ様に男の魂と入れ替わっているのだと悟った。
「そうだよ。ボクも初めのうちは自分の体に戸惑って、いつも不安だった。誰かにバレて、責められたらどうしよう、バカにされるかなって。でもボクはボクなんだし、この体で生きていこうって思うようになったんだ」
「そうだったの……ルキーニちゃん、大変だったね?」
「ボクなら、ソニアちゃんの辛い気持ちも分かってあげられると思う。ソニアちゃんが、打ち明けてくれて良かったよ。ソニアちゃんの秘密を聞いてもボクはソニアちゃんのことをキライになったりしないし、守ってあげたいなって思うよ」
秘密を分かち合った2人は、しばらく何も言わずに互いをいたわるように優しく抱きしめあった。
「ソニアちゃん。ボクはソニアちゃんを受け入れる心の準備はできてるよ。ソニアちゃんも良く考えてみてね。良い返事を待ってるよ」
そうしてルキーニはソニアの額にそっと口付けた。
ソニアはルキーニの唇が離れた後もそこに温もりが残ったように感じた。
と、そこへ慌ただしい足音と共に廊下から扉を開けて王妃マリアが現れた。それに驚き離れようとしたソニアの腕をルキーニは胸に抱え込んで離さなかった。
「ソニア、貴方に会いに南方から婚約者候補の方が見えたのですがどこかへ行ってしまって……あら、まあ。ルキーニ殿下。こちらにいらしたのですね」
「お、お母様。これは……」
「……まあ驚いた。早速仲良くしていただいていたのですね。ソニア、その御方に大事にしていただきなさい……ね」
睦言の最中と思ったのか、駆け込んだ時と同様に足早にマリアは去っていってしまった。
言い訳をする暇もなかった。
しかしなんとなく興がそがれて、部屋に残された2人はゆるゆると拘束を解き離れた。
「それじゃあ、ソニアちゃん。また遊びに来るよ。返事はいつでも待ってるからね」
ルキーニも来た時と同様に自分が入ってきた窓から去っていった。魔力回路のトランプが新しい階段をつくり、ルキーニを中庭へと導いた。
ソニアはその後ろ姿を複雑な思いで見守るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます