ep5-6

「ヨメって……え?」

「だからぁ、ソニアちゃんとボクが結婚するって事! ソニアちゃんのお母さんに頼まれてさー。ボクも不安だったんだけど、ソニアちゃんが良い子みたいで安心したよー。こう見えてもボク、南方諸島の王国の出身だからね。自分の領土として52の島を治めているんだよ。ソニアちゃんが来てくれたら53番目の島を2人の愛の巣にするつもりさ。ロマンチックでしょ? ね、ね? ソニアちゃん~」

「えーと、えーと……展開が早すぎてついていけませんわ」

 次から次へと語られるルキーニの言葉にたじろぐソニア。

 そもそも、同性のルキーニと結婚などできるのだろうかとソニアは疑問に思う。

 いや、体こそ同性だが自分の中身は元は男なのだから、お見合いで言い寄ってきた男たちと結婚するよりは良いのではないか、とも思う。

 また、先ほどルキーニは「ソニアちゃんのお母さんに頼まれて」とも言っていた。つまり、ソニアの母マリアが男性恐怖症と思しきソニアのためにわざわざ他国の王家に掛け合ってくれたのだろうと気付く。もしかしたらルキーニの出身である南方諸島では同性婚も認められているのかもしれない。

 色々な状況から、ソニアはルキーニと結婚する事が現状での最善策なのかもしれないと考える。

 ソニアはルキーニに抱き付かれても悪い気はしなかったし、ルキーニもソニアを気に入ったらしい。であれば他の縁談を持ち込まれる前に心を決めてしまっても良いかもしれない。

 半ば諦め気味にソニアは思った。

 ツガルは命こそ取られなかったものの国外追放となったと聞く。いつか出会ったときに再び体を交換できれば良いかもしれないが、その時にはツガルも新しい生活を手に入れて落ち着いているかもしれない。それどころか、もう二度と会えないかもしれないのだ。であればソニアも心と体の不和に抗う事を諦めてお姫様としての人生に対して前向きになった方が、この体の為にもなるのではないか、と。

 ならばこそ。

 お姫様として生き、ルキーニを結婚相手として迎えるのであれば、人生の伴侶に対して隠し事をして騙すわけにはいかない。

 彼本来の誠実さから、ソニアは決意した。

 すべての秘密を打ち明けた上でソニアを受け入れてくれるなら喜んでルキーニと結婚しようと。

「ルキーニちゃん。聞いていただきたい事があります」

「ほえ? 何かな何かな~?」

「実は……」

 ネグリジェの裾をギュッと握り、呼吸を整えて打ち明ける。

 真剣な告白の雰囲気を察して、ルキーニも姿勢を正した。

「わたくし……信じてもらえないかもしれないけど、実はオレ、心が男なんだ」

 ルキーニの目をじっと見据えて、ソニアは打ち明けた。

 告白を聞いたルキーニの目から幼さが消え、慈愛の色が浮かんだ。

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