第33話 シンリャークside 最高幹部会 2

 四天王の一人であるソノイチの登場により騒然とする会議場。そんな中、一人がソノイチに向かっておずおずと尋ねる。


「ところで、今回の幹部会には出席されていたのですか?てっきりまた面倒だからとサボって……いえ、多忙のため欠席するものと思っておりました。確か四天王の皆様は、複数の星が手を組んでできた抵抗勢力と戦っている最中なのでは?」


 四天王はその名の通り四人いるが、彼らがこの会議に出る事をは滅多にない。ましてや今の彼らは任務中特別任務を受け持っている身であり、出席しているとは誰も思っていなかった。

 だがソノイチはサラリと言い放つ。


「抵抗勢力か。それならついさっき我ら四天王が全滅させてやった。あまりに早く終わりすぎて暇になったものだから、こうして顔を出したのだ」

「なっ……!」


 会場中からどよめきがおこり、彼の力に皆が戦慄する。だがそれはやがて賞賛への声へと変わっていった。


「さすがソノイチ様!さすが四天王!」

「あなた方がいればシンリャークは最強無敵です!」

「いよっ、宇宙一!」


 ソノイチはそれを聞いて満足そうに頷いた後、改めてシレーを見る。


「シレーよ。貴様がやられた相手、何と言ったかな?」

「ア、アマゾネスでございます」


 震える声で答えるシレー。相手は本来なら自分がまともに話をすることさえできないくらいに遥か上の存在だ。処刑を止めてくれた事には感謝するが、これからの返答次第では不興を買って、やっぱり死ねとか言われかねない。


「アマゾネスか。そいつは本当にそれほど強いのか?」

「それはもうヤバいくらいに」

「魔獣を素手で瞬殺と言うのも本当か?」

「はい、全て真実です」

「一人の女がそれをやったと言うのか?」

「はい」


 答えながら、さっき同じ事を言って信じてもらえなかった光景が頭をよぎる。もしここで彼にまで嘘だと言われたら、今度こそ自分は終わりだろう。

 だがソノイチはシレーの発言を否定しなかった。


「それほどの強者、ぜひとも戦ってみたいものだ。ちょうど任務も終わって暇になった事だし、私が行って相手をしてやろう」

「まことでございますか!」


 元々シレーは援軍を送ってほしくてこの会議に繋ぎをつけた。それでもまさか、彼ほどの大物が出向いてくるとは夢にも思っていなかった。

 だが事態はそれだけでは終わらなかった。


「せっかくだから、他の四天王も連れて行くことにしよう。よいな」

「他の四天王!?それはまさか、ソノニー様、ソノサン様、ソノヨン様を含めた全員でございますか?」


 信じられない気持ちで他の四天王の名前をあげる。四天王はいずれも一騎当千の力を誇る、シンリャークの最高戦力だ。たかが一つの星の侵略に彼ら全員が出向くなど前代未聞のことだった。


「不満か?」

「滅相もありません!四天王の皆様と直接お会いできるとは、身に余る光栄にございます!」

「では決まりだな。他の者も異義はないか?」


 一応意見を聞いてはいるが、もちろん反論する者は誰もいなかった。


「ありません。あるわけありません!」

「全てソノイチ様の言う通りです!」

「いよっ、宇宙一!」


 こうしてソノイチの登場により、会議は急速に終わりを向かえた。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「あー、怖かった」


 幹部会との通信を終えたシレーは疲れた声で呟いた。ある程度覚悟していたとはいえ、ずっと緊張で胃がキリキリと痛みっぱなしだった。

 それでも、途中にあった処刑されそうな流れを思うと、この結果は大いに喜ばしいものだ。


「これでは流石のアマゾネスも終わりだな。まさか四天王が、それも四人全員が来られるとは。棚からぼた餅とはこの事だ」

「何よりあのタイミングで登場してくれたお陰で、我々は命拾いできましたな」


 ウワンの言葉にシレーは頷く。だがその直後、先ほど起こったある事を思い出し、憎々しい表情で彼を睨み付けた。


「そう言えばお前、俺を裏切って自分だけ助かろうとしただろ。俺の事を無能とも言ったよな」

「いえ、それは……」


 処刑されそうになった時、シレーを売って自分だけが助かろうとした一件のことだ。なんとか言い訳しようとするウワンだったが、あそこまではっきり言ったのだからごまかせるはずもない。しかしシレーはしばらくの間睨み続けていたものの、それからあっさりと話題を変えた。


「まあいい」

「えっ……?」


 驚くウワン。シレーだって本当はもっとネチネチと責め立ててやりたかった。だが今はそれよりももっと大事なことがある。


「貴様をどうこうするよりも四天王の方々を迎える準備の方が大事だ。無論、貴様には存分に働いてもらうぞ」


 もし接待に不備があり、やって来た四天王の不興を買おうものなら、今度こそ自分は終わりだ。そう思えばこそ、今は人手が多いに越したことはなかった。それが例え自分を裏切ろうとした部下であってもだ。


「はっ、なんなりとご命令ください。私、シレー様に一生ついていきます」

「その言葉は信用ならんな」


 信頼関係に溝ができたことはさておき、二人は四天王を迎える準備に勤しむのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る