第154話 涙と涙
兎にも角にも女神の涙の情報を入手することができた俺たちは、ルーディアへと帰ってきた。
本当はもう少しメリューカに滞在して、テリス姉妹に個人的な報酬を貰いたかったのだが、なぜか帰りを急かすエルフィナスによって、強制送還と相成った。
ルーディアに到着すると、全員でゾロゾロとエロ女神に会いに行くわけにもいかないので、一度パーティーを解散することになった。女神の元へ向かったのは、俺とエルフィナス、それとなぜかニジナが付いてくることに……
「どうしてニジナが付いてくるんだよ」
「そっ……そんなの、私も女神様に会いたいからに決まってるでしょ」
「なんだよ、人と女神が会うなんてとんでもない事みたいに言っておいて──」
「いいでしょう、別に……」
まあ、ニジナの気まぐれなど気にしても仕方ない、気にしないで女神の祭壇へと向かうことにする──
女神の祭壇に行く前に、商店へと立ち寄ってタマルネギを大量に購入した──そう、女神の涙入手作戦に必要だからだ、それを女神の神殿内にある、エルフィナスの私室ですり潰す……
「ぐふっ……うっ……すげーな……涙が止まらないぞ……」
「ちょっと、ジンタ! 私の方にすり潰したやつ近ずけないでよ!」
「どれくらい効果あるか試しただけだろ」
「3人とも涙ボロボロ流してるの見えてるでしょうが!」
「ふっ……目がショボショボで見えないぞ」
「……もう、いいわよ、早くこれを袋に詰めましょう、このままだと体の水分全部、涙で流れ出ちゃうわよ」
タマルネギのすり潰したやつを袋に詰めると、顔を洗って一息付く──
「まだ、目がショボショボする……目ん玉取り出して洗いたい……」
「それには同意するわ……」
俺の心の叫びを聞いたニジナも、目をパチパチさせながら頷く。
「それでエルフィナス、女神にはどうやって会うのだ」
具体的な方法を聞いていなかったのでこのタイミングで尋ねる。
「女神の祭壇の奥に、ラミュシャ様の貢物を奉納する台座があるのを知っておるか」
「あーよく果物とか置いてる台だな」
「一般人には知られてないが、あそこに置かれた貢物はラミュシャ様の下まで転送される仕組みになっているのじゃ、それを利用する」
「ちょっと待て! 俺を貢物にする気か」
「そうじゃ、まあ、いつもなら危険な貢物がされないか見張っている巫女がいるが、それは私も巫女の一人じゃからな、なんとでもなるぞ」
「そんな心配してねえよ! 危険とかないんだろうな」
「なんじゃ、ビビっておるのか、いつもの威勢の良さはどうしたんじゃ」
「くっ……そこまで言うなら行ってやろうじゃねえか!」
「それで良い、うむ……それにしてもニジナ、どうしたんじゃ、そんな心底安心した顔をして……」
ニジナの表情を見て、エルフィナスがそう問う。
「だって、ジンタを女神様に会わせるなんて言うから……てっきり天界の門を使用するのかと思ってたから……そうかそうか貢物で……」
「なんだ、天界の門って」
知らない単語だったから俺が聞くと、ニジナの表情が曇る。
「あっ!! いや……なんでもない! 『展開だもん』って言ったんだよ」
「逆に『てんかいだもん』ってなんだよ」
「えーと……展開が早く、だよね、そうだよねって意味だよ……」
「……ふっ、なるほどな、いい感じに話が進んでいるなってことだな」
「そ……そうだよ、その通り!」
まあ、本当は誤魔化されてはないが、ニジナの言葉にそれほど興味がないのでスルーしてやる。
エルフィナスは、貢物の台座を見張っている巫女に声をかける。
「シグリム、どうじゃ調子は」
「あら、エルフィナス、どうしたの、女神様の使いで外に出てるって聞いたけど」
「うむ、さっき帰ってきたばっかりじゃ……それより、お主、五次職冒険者のルキアのファンじゃったな……」
「えっ、そうだけど……」
「さっき、大門のところでルキアを見かけたぞ」
「うそ、本当に! うわ……見に行きたいな……どうしてこんな時に台座の見張り当番なのよ……」
「ふっ……まあ、あれだ、見張りは少しの間、私が代わってやってもいいぞ」
「えっ! 本当に! 助かるわ、エルフィナス」
エルフィナスに礼を言うと、巫女は走って外に出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます