第118話 しばし休憩

色々問題は解決され、明日には村を旅たつことになった。ゆっくりできるのは今日だけなので、一日オフとして、みんな村でゆっくり休むことになった。とっ言っても、ジークとかロッキンガンは村に来てほとんど飲んでは寝てのぐーたら生活を満喫していたが……


「村はずれに温泉があるらしい──俺たちはそこに行くぞ」

村の酒を絶滅される勢いで酒を飲み進めるジークたちに、俺はそう宣言する。

「そうかそうか、まあ、ジンタは色々頑張って疲れただろう。ゆっくり温泉に浸かって来い」

まあ、予想していたが、ロッキンガンもジークも酒場から出るのを嫌がって一緒に来る気はないようだ。まあ、こいつらは疲れてないだろうから放ってこう。


面倒臭がりの男二人と違い、女性陣は全員乗り気である。

「あれ、ユキは熱い風呂が嫌いじゃなかったっけ」

俺がそう指摘すると、ユキは不敵に笑いながらこう言ってくる。

「ふふふっ……ジンタ──情報不足──その温泉には水風呂もある」

「ほほう──そうなのか──それは良かったな」


いつもユキは大浴場に行かないで、一人、桶に水を張って体を洗っているので、今回、みんなと一緒に風呂に入れるのが嬉しいようだ。


温泉は村から少し歩いた森の中にあった。大きく古い建物で、あまり整備されているようには見えない。少し不安な感じにはなったが、温泉特有の硫黄の匂いが香ってきて誘われる。


「大丈夫なの、ここ……なんか今にも倒れそうじゃない?」

老朽した建物を見て、ニジナが素直な感想を言う。その意見にキネアも同意する。

「そうね──普段だったら絶対入りたくないわね」


まあ、ここまで来て温泉に入らないで帰るって選択はない。俺は思い切ってガタガタの扉を開いた。


外見のイメージそのままに、内装も中々の荒れ具合で俺たちを引かせる。

「──いっらつしゃぃませぇ……」

奥にカウンターがあり、そこに背の小さなおばあちゃんが、高い椅子に座っている。おばあちゃんは俺たちを見ると、精一杯の声で出迎えてくれた。

「ばあさん、ここは温泉で間違いないか」

「あいっ……旦那は三年前に亡くなりましただ──」

「……いや、ここは温泉かと聞いているんだけど」

「あいっ……もう90歳になります──」

どうも耳が悪いようで聞き取れてないようだ。俺はおばあちゃんの耳の近くでこう叫んだ。

「ここは温泉ですか!」

「そんな大きな声出さんでも聞こえとるわ!」

耳が悪かったわけじゃないようで、すごく怒られた。どうやら俺たちをからかっていたようだ……大丈夫かここ……


「一人、500ゴルドじゃ」

「安いな──」

「安いと思うならもっと置いていっていいんじゃぞ」

「いえ、500ゴルドが良いです……」


どうも、このおばあちゃん相手だと調子が狂うな……


俺は人数分のお金をおばあちゃんに渡した。

「なんじゃ、全然足りんぞ」

「何言ってるのだ。5人だから2500ゴルドで合ってるだろ」

俺と、ニジナ、キネア、ユキ、シュラなので五人のはずだ。

「ワシには13人に見えるのだがな」

「13人?」

俺は疑問に思いながらも人数を数える為に後ろを振り返った。するといつの間にか元おっさんのラビットゴージャスたち8人が後ろに勢ぞろいしていた。

「どうして、ここにいるのだお前たち──」

「はい──私たち、進化前にジンタさんに大変お世話になったと聞きました。明日には出発されるとの話ですので、ご恩を返すには今日しかないと思い、追いかけてきた次第です」

「そ……そうか──まあ、そんなに気を使わなくてもいいぞ」

「いえ、ぜひ、ご恩をお返しさせてください」

うむ……元おっさんでなければ嬉しい話なんだけどな……

「それよりどうするんじゃ、入るのか、入らんのか」

おばあちゃんに急かされ、とりあえず13人分の6500ゴルドを払う。

「右が男で、左が女じゃ」


まあ、とりあえず温泉に入るかと、一人右へと向かう。しかし、なぜかラビットゴージャスたちが俺に付いてくる。

「お前たち、こっちは男湯だぞ」

「え! 私たち、男じゃないんですか?」

え……そう言われれば元はおっさんだし……見た目が今は女ぽいからそうだと思っていたけど……実は男なのか!?

「キネア! ラビットゴージャスは男なのか?」

困った俺はモンスターの知識が豊富なキネアにそう尋ねる。

「男に決まってるでしょう。そっちで一緒に入りなさい」


そうなのか……それなら仕方ない──でも、なんだろう……そう言い終わった後のキネアの顔が不敵に笑っているように見えたのだが……

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