第110話 盗人猛々しい
宴会が終わった後に、とりあえず俺の部屋にみんなを集める。五人も入れば窮屈になる部屋に、15人も集まったのでそれはもうむさ苦しかった。
「なんだよ、ジンタ。俺はもう寝たいぞ」
ロッキンガンが当然のように文句を言ってくる。不満があるのは理解するが、明日の本格的な調査の前に、どうしても確認していないといけないことがあった。
「うむ。この村の秘宝である青い宝石がなくなったのは聞いたよな。念のために聞いておくけど、この中にそれを盗んだ奴はいないよな? 今、正直に言えば、許さなくもないぞ」
「おいおい、俺たちの中にそんな奴がいるわけ……」
ロッキンガンはおっさんたちを見えて、言いかけた言葉を止めた。
「ちょっと待ってよ。おじさんたちを疑ってるの? 確かに怪しい格好してるけど、そんなことをする人たちじゃないわよ……多分……おそらく……きっと……そうだと信じたい……」
ニジナは喋っていて、どんどん自信がなくなっていったようだ。確かにおっさんたちは、大食いで役立たずだが、これまで悪いことをなどはしていない。だが、仲間の中で怪しいといえば彼らしかいなかった。
「お前たち、青い宝石とか盗んでないよな」
ジークがストレートにそう聞いた。これまでの反応から、彼らが言葉を理解しているのは間違いない。なので言われていることはわかっていると思うけど……やはりというか答えは返ってこない。彼らはおどおどとするだけであった。
「ジンタ、おっさん、いじめたらダメだよ」
ユキがそう言っておっさんたちを庇う。別にいじめてる訳ではないのだがな……
まあ、おっさんたちが食べものでもない宝石を盗むわけないかと結論になり、やはり別に犯人がいると考えることになった。
「そういえばシーフって盗人って意味だよね」
キネアがハイシーフのロッキンガンの顔を見て、不意にそう言った。みんなの疑いの目がロッキンガンに集まる。
「ば……馬鹿野郎、確かにそうだけど……厳密に言うとそうじゃねえし……冒険者のシーフってのはな……そんなんじゃねえんだよ! いやいや、俺は取ってねえからな!」
ハイシーフには、アイテムの価値などを鑑定するスキルがあると聞いたことがあるので、ロッキンガンが犯人なら、そんな価値のないものを盗むはずはないだろうということで話はまとまってしまった。
なので、やはり明日から犯人探しである。それで数日ここに滞在することをみんなに告げると、意外に歓迎された。よほどここまでの旅路が辛かったのだろうか、もう少し休めるのを素直に喜んでいる。
次の日──決して寝心地の良い環境ではなかったが、やはりベッドで寝れるのは大きく、熟睡できた。とりあえず捜査の前に朝食を食べようと酒場へと足を運んだ。
酒場では、意外に早起きなジークが昼間からエールを飲んでいた。
「おう、ジンタ。お前もどうだ」
「朝っぱらからアルコールはキツイよ……」
「馬鹿野郎! エールなんてアルコールに入るかよ」
どんな理屈なのかはわからないけど、ジークにとってはエールは、ミルクと同類の飲み物らしい。
それでもエールを飲まされそうになっていると、ニジナとユキがやってくる。
「ジンタ、朝食は食べたの」
「いや、これからだ」
「この村は山菜が名物らしいよ」
「ほほう……ではこの山菜のフライ定食にするかな」
「朝から揚げ物ってどうなのよ」
「馬鹿者、朝だからこそ高エネルギーな食べものがいいのではないか」
「またそうやって一見まともな意見を言って……」
そんなニジナは山菜サンドのセットを注文している。ユキは相当悩んだ結果……
「ユキは、冷やし麺の大盛りと冷やし飯」
朝から遠慮なく食べるやつだ……
「シュラはどうしたんだ」
俺が聞くと、ユキが答えた。
「シュラはまだ寝てる」
「朝寝坊なやつだな」
「シュラ、夜遅く抜け出して、帰ってきたの朝だから」
あいつ、また、なんか変なことしていたな……羨ましい奴だ。
「ニジナのそれ美味しそうね、私もそれにしようかな」
起きてきたキネアは、ニジナの食べている山菜サンドのセットを見てそう言ってきた。
「遅いぞキネア、それ食べたらすぐに事件の調査だからな、一瞬で食べろ」
「私は食事はゆっくり頂くことにしているの、なんなら先に調査してていいわよ」
「何を言っているのだ! お前がいないと調査なんてできるわけないだろう」
そうなのだ、調査と言ってもレンジャーのキネアのスキル頼りで、俺が何かをするわけではない。彼女がいないと何もできないのが現実であった。
「じゃあ、食べ終わるまで待ってなさいよ」
「ぐっ……ぐうの音しか出ないぞ……」
そのあと、遅く起きてきたロッキンガンはジークと飲み始めた。おっさんたちも朝食を食べに来たので、大盛りの定食を注文してやる。
シュラは起きてこなかったけど、調査の役に立つかどうか微妙なのでそのまま放置するとして、俺とニジナとキネア、そしてユキで事件の調査をすることになった。
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