第39話 出たらしいよ

幻を見ているのか、俺にはシュラザードが裸で走ってきているように見える。褐色で豊満な胸を激しく揺らせながら廊下を全力疾走する彼女は、俺とニジナを見つけて飛びついてくる。


「で・・出た!」

慌てた様子でそういう彼女はやはり裸で、ニジナが必死で隠そうとする。俺は人間の裸などに興味がないぞと言いたいがやめとく。

「どうしたの、シュラザード」


ニジナの問いに震える声でこう話す。

「ふ・・・風呂場で出たのよ幽霊が・・」

それを聞いた俺とニジナは笑いながらこういう。

「またまた。何か見間違ったんじゃないのか」

「ち・・違う・・長い髪のガイコツで・・」

「ガイコツ? スケルトンか何か?」

「いや・・ターン・アンデットも効かないのよ・・」


ちょっとシュラザードの話がよく分からない。とりあえずニジナと一緒に浴室に戻って服を着てくることになった。


シュラザードが服を着てくると、3人で酒場に戻る。そこでヴァルダやディレイに、幽霊の話をした。

「ほほう。面白い。幽霊が出るってんならここが激安なのも納得できるし、理由が分からないよりいいんじゃないか」

ヴァルダは激安の理由がわかったことに喜んでいて、幽霊については問題にしなかった。


「そもそも本当に幽霊だったのか? 何かの見間違いだろ」

ディレイも話半分で聞いていたようで、完全に信じていない。


「こうなったら宿のおばちゃんに聞いてみよう」

そう俺が言うとシュラザードもニジナも賛成する。


「そりゃ幽霊くらい出るでしょ。激安宿ですからね。ふほほほほっ」

と、隠しもせず話してくれた。


詳しく聞くと、この宿のあった土地にはとある貴族が住んでいて、その貴族は実は殺人鬼だったらしく、街で多くの人を拐ってきてはその屋敷で惨殺していたらしい。その犠牲者の怨念がこの土地に残っていうとのことであった。みんな知ったら怖いだろうから内緒にしとこ・・


「うわ・・ちょっとニジナ。今日、一緒に寝て・・」

シュラザードにそうお願いされて、ニジナは渋々了承していた。



幽霊など気にしない俺はそろそろ寝ようと、一人部屋に戻りベットに横になる。いつも床に毛布の睡眠なので、今日はいつもより良い眠りにつけそうだった。


目を瞑るとすぐに心地よい眠りがやってくる。


そして何時間くらい経過したのだろうか・・何かの強い視線を感じて俺は眠りから覚める。何者かの気配を感じて部屋を見渡すと、テーブルの横に人影が見えた。

「誰だ・・誰かいるのか?」

そう声をかけても返事はない。もう一度俺は声をかける。

「何か用なのか? 用があるのなら言ってくれ」

すると人影を俺の方にゆっくりと近づいてくる。それは歩いてくるというより、床を滑るような感じで接近してきた。近づくとその人物がよく見えてきた。それは俺とニジナを地下室に連れて行ったメイドであった。


「お客様・・・私・・・痛いんです・・苦しいのです・・」

そう言いながら顔を近づけてくる。そんな彼女の顔は美しい少女なのだが、その顔色は真っ青で、そして何より少し透けている・・・やべ・・・エレメンタル体だ・・薄く透き通った人肌が、たまらんではないか・・くっ・・やばい、この子のおっぱいが見たい・・ちょっと脱いでくれないかな・・・


「おい。幽霊・・・ちょっと頼みがあるんだが・・」

「・・・・・はい。何でしょ・・・」

「ちょっとだけでいいんだ・・・服を脱いでくれないか」

「・・・・・はっ?」

くそ! 我慢できん。俺は返事を待たずに、そのまま彼女をベッドに押し倒そうとした。だが、やはりというか当然というか・・彼女の体に触れない。


「ちょっと・・・何しようとしてるんですか・・」

「いいから服を脱ぐんだ幽霊よ!」

「・・・嫌ですよそんなの・・」

「なぜだ! お前幽霊だろ! 無料の娼婦みたいなもんだろうが!」

「どんな目で幽霊見てるんですか!」


「頼む・・頼むよ・・見たいんだよお前の裸が・・」

「いや・・そんな悲壮感出して言ってもダメですよ」

「くそ・・・どうすれば脱いでくれる?」

「・・・・では、一つお願いがあります。この宿には強力な悪霊が一体いるのですが、それを退治してくれませんか」

「ほほう。悪霊か・・・いいだろう。それを退治したら、裸にして、色々するけどいいのだな」

「・・・仕方ないです・・」


こうして、宿の悪霊を退治することになった。時間はまだ深夜のようで、みんな寝ているのか宿は静けさに包まれている。


一人で悪霊など退治できるわけもないので、俺は迷わずニジナを起こしに行く。

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