第35話 ブラックドラゴン討伐隊
三次ジョブクエストのブラックドラゴンの討伐について、いつものごとくディレイに相談する。
「うわ・・・まじか・・二次職のジョブクエストでブラックドラゴンの討伐なんて聞いたこともないぞ」
「なんだと・・・やっぱりあのクソ女神、俺に意地悪してるな」
「まあ、制約が無いから難易度はそれほど高くは無いかもしれないけどな」
「そうなのか?」
「だって高レベル冒険者を金で雇えば誰にだって達成できるんだぞ。簡単といえば簡単だろ」
「金さえあればだろ・・俺に金は無いぞ」
「だからギルドってもんが存在するんだろ。安心しろ、ギルドで全面的にバックアップするからよ」
さすがは持つべきは所属ギルドである。
「と言っても、今はルキアもジークも留守だからな・・あの二人がいればブラックドラゴンなんて楽勝だったけどな・・」
「無責任ギルマスはいつ戻るのだ」
「どうだろな・・かなりの長旅になるとは聞いてるけど・・」
「それじゃ、ブラックドラゴン討伐隊はどう編成するんだ」
「うむ・・・まあ、俺とヴァルダとエミュリタ・・それと・・う・・ん、瞬殺されるから下手な前衛は連れて行けないからな、支援で三次職から何人か・・シュラザードとウリエルくらいかな」
そう話をしていると、ニジナが話に入ってきた。
「私も参加しようかな・・・ブラックドラゴン見たことないし、一回見たいんだよね」
どこか挙動不審にそう言う。ディレイは危ないと言って反対していたが、後衛職であることから、無理をしないことを条件に参加を許可されていた。
ブラックドラゴン。レベル70オーバー。上級竜種の一つで、あらゆる属性の魔法を使いこなす。漆黒の体は高い物理耐性と魔法耐性を併せ持ち、鉄壁の防御を誇る。しかし、強敵であるモンスターではあるが、討伐するとその恩恵も計り知れない。鱗は高額の素材として取引され、牙は貴重なレアアイテムであった。
ブラックドラゴンの討伐と聞いて、ヴァルダもエミュリタも喜んで参加してくれるそうだ。ヴァルダは四次職のパーフェクトアーマーというタンク職で、エミュリタは三次職のマスターウィザードである。
マスタープリーストのシュラザードと、ネクロマンサーのウリエルも参加を了承して、ブラックドラゴン討伐隊のメンバーが決まった。
もちろん三次ジョブクエストを受ける本人であるジンタを中心として、サブマスの三人、ディレイ、レベル62の魔法剣士。ヴァルダ、レベル91のパーフェクトアーマー。エミュリタ、レベル68のマスターウィザード。シュラザード、レベル58のマスタープリースト。ウリエル、レベル55のネクロマンサー。そしてニジナの七人。それにジンタの召喚モンスターであるユキとシュラを入れた九人パーティーとなる。それ以外にもサポートメンバーとして五、六人が同行するが、基本的には戦闘はせず、荷物の運搬などを行う。
ここから一番近いブラックドラゴンの生息地は、ルーディアから歩いて3日ほどの場所のキリア洞窟である。日帰りで行ける場所ではないので、十分な準備が必要であった。
「二週間分の水と食料・・罠やポーション、あとは予備の武器やマジックアイテム・・他に何か必要ないかな」
ディレイが旅の準備をしながらそう聞いた。
「ヴァルダがいるから食料はもう少し持ってた方がいいんじゃないの」
エミュリタがそう言う。ヴァルダはギルド一の大食漢で
みんなで用意した大量の荷物を荷馬車に積み込む。荷馬車はギルドが所有する物で、ギルド狩りや、大規模なクエストなどで使用される。
準備が終わると、勇者酒場で壮行会という名の飲み会が行われた。明日出発するとしばらくここにも来れないので、料理を堪能する。
「それにしてもジンタがレベル20か・・ちょっとレベル上がるの早すぎるな」
ディレイが酒を飲みなが染み染みとそう言う。
「俺もそんなに早くレベルが上がるとは思ってなかった」
「ちょっと最近のジンタは頑張りが異常だよ。どうしてそんなに急いでるの?」
ニジナの質問に俺は無表情でこう答えた。
「別に急いではいない。ただ、目の前の障害をクリアしていってるとそうなっていただけだ」
なんかかっこよく言っているが、エロいことをしたくて画策しているとそうなっただけである。しかし、何を勘違いしたのか、それを聞いていたニジナやディレイは、いやに感心している。
それからディレイが、やっぱり俺が認めた男だとか、これからのギルドを背負っていく男だとか、酔った勢いで色々話し始めた。だが、俺はそんなものに興味はない。エロいことをしたいだけだ。
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