第24話 悲しき話

時に運命とは恐ろしい現実を突きつける。


とある村の村長の家に娘が生まれた。しかし、その誕生は喜びとは遠い形で迎えられた。なぜならその赤子は、人の子とは思えぬ容姿をしていたからである。


最初に母親の不貞が疑われた。だが、間違いなくその子は人と人との子であった。それで父親はあらゆる書物を調べた。結果、その答えは驚くものであった。


ミュータント。突然変異と言われるものだと結論付けされた。


その赤子は成長すると、獣人のような容姿となっていった。当然のように、同じ年の子供たちからは怪物扱いをされてのけ者にされていた。時には暴力を振るわれ、石を投げつけられたりもした。そんな時は何時も、その子供は家に泣きながら帰って行き、母親にすがりついた。


泣きながら帰ってきた子供を母親は優しく抱きしめると、いつも涙を流してその子に謝っていた。そんな姿に産んでごめんなさいと・・


唯一の味方であった母親は、その子が10歳の時に、流行病にかかり亡くなった。


それからは寂しい生活が待っていた。友達もいなく、外に出れば石を投げられる・・もう泣きつく母親もいない・・彼女は寂しさで死んでしまいそうであった。


だけど、そんな彼女に、母親以外の、心の許せる友達ができた。それは村に引っ越してきた冒険者の子で、父親の仕事の関係で獣人に対する免疫のあった娘であった。


二人はすぐに友達となり、友情を育んでいく。だけど育まれたのは友情だけではなかった。いつしか二人は友情以上の感情を、お互いに感じるようになっていた。


二人が肉体的に結ばれたのは14歳の時だった。家の納屋でじゃれあってるうちに、どちらからともなくキスをした。そしてお互いの体を求めあった。


それから二人は幸せな生活を送っていたが、16歳の時に、突然別れの時が来た。彼女が冒険者になる為に遠くの街へ行くことになったのだ。


彼女はしばらく落ち込んでいた。家に閉じこもって外に出ることもなかった。だけど・・彼女との熱い夜を思い出すと、どんどん我慢できなくなっていった。やがて湧き上がる性欲を制御できなくなり、村の外へ出ては娘を拐ってはその性欲をぶつけた。


「それが今回の事件ですね」

俺がそう言うと、村長は頷いた。この家の中年男は、その獣人の父親だった。そしてこの村の村長でもあった。


「それより、クエストの報告どうする・・」

ニジナがそう言うと、村長が頭を下げてこう言う。

「どうか穏便にお願いします・・」


「拐われた娘達も無事だし、彼女も反省してるようだから・・」

「だけど、どう言い訳するんだ。娘達が獣人に襲われたことは隠せないぞ」

「う・・ん。倒したと報告するか・・それもボロが出そうだな・」

そう悩んでいると、ニジナがこう言ってきた。

「ジンタ。あんた、あの子と契約したらどう? 召喚士が契約したって話なら、討伐と評価は変わらないし・・」

すごくグッジョブな発言だ。あんなエロい子となら、いくらでも契約したい。だけど一つ問題があった・・・

「そうしたいが、空の召喚石がない・・」

「あっ・・そうか・・」


しかし、意外なところから話が進展する。

「いえ。召喚石ならありますぞ」

そう言ったのは村長であった。実は村長。娘の暴挙に気がついていて、最悪の場合、彼女を召喚石に閉じ込めることを考えていた。なので、空の召喚石を購入していたのだ。しかし、召喚士でもない村長はその使い方もわからず、タンスの奥に閉まったままになっていた。


「これでよろしいかな」

そう言って召喚石を持ってきた。俺はそれを持って彼女の前に行く。そしてこう尋ねた。

「俺と契約してくれるか。もし、契約するのなら、お前の名前を教えてくれ」

少しの沈黙の後、彼女は覚悟を決めたのかこう言った。

「契約する・・私はシュラだよ・・」

それを聞いた俺は微笑む。そして契約の言葉を続けた。

「我が名はジンタ。ミュータントのシュラを、この召喚石の宿主として認める!」


シュラは光り輝いて、召喚石の中に入っていった。シュラの入ったその召喚石を、村長は悲しいような寂しような目で見つめていた。


そのあと、俺たちは冒険者組合に行き、クエストの完了を報告した。行方不明だった娘達からも話が入っていたようで、クエスト完了は早々に受理された。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る