第三十六話 強い意思で
クロスとクロウは、訓練を積み重ねた。
強くなって、騎士になるために。
島の民を守るために。
そして、月日が流れ、三年後。
クロスとクロウは、13歳になった時、騎士の試練を受ける資格が与えられた。
フォウやパートナー精霊のアストラルとニーチェ。
華のシャーマンとパートナー精霊、雷のシャーマンとパートナー精霊が見守る中、彼らの試練は、遺跡の前で行われることとなった。
「いよいよじゃの」
「うん」
「ああ」
フォウは、クロスとクロウに声をかける。
いよいよだ。
この時が来たのだ。
誰もが、期待しているのだろう。
その期待に応えるべく、クロス、クロウはうなずいた。
騎士になるために。
「とうとう、彼らが、騎士になるのですね」
「あいつらは、最短でで騎士になるんだったな」
「ええ。素晴らしいです」
アストラルとニーチェも、期待しているようだ。
ニーチェ曰く、クロスとクロウは、最短で騎士になるらしい。
騎士になる年齢の上限は決まっていない。
三年以上の訓練を得て、他の騎士達が、認めて、初めて、騎士の試練が受けられるのだ。
クロスとクロウは、三年で他の騎士達に認められたのだ。
彼らの強さを。
ちなみに、他の騎士は、四年以上はかかっている。
そう思うと、アストラルとニーチェは、誇らしかった。
「今回は、カイリ皇子が、来てくれたぞ」
「ありがとう、カイリ」
「助かる」
フォウは、カイリが、ここに来てくれたことを明かす。
カイリも、待ちわびていたのだ。
クロスとクロウが、騎士になる時を。
クロスは、嬉しそうに、微笑んだ。
クロウも、穏やかな表情で。
二人の表情を目にしたカイリは、微笑んでいた。
うれしくて。
「では、試練を言い渡す。遺跡にある古の剣を使って、妖獣を倒してくるのじゃ」
フォウは、試練の内容を説明した。
古の剣で、妖獣を倒すというシンプルな内容だ。
「お主らは、古の剣に触れることができる。じゃから、あとは、扱えるかどうかじゃ。じゃが、二人ならば、古の剣も、強い意思に応え、共鳴してくれるじゃろう」
「つまり、古の剣を使いこなせるかどうかってことか」
「そう言う事じゃ」
フォウは、詳しく説明してくれる。
問題は、妖獣を倒すことではないようだ。
古の剣を扱えるかどうかのようだ。
その事に気付いたクロウ。
さすがと言ったところであろう。
フォウは、嬉しそうに微笑んでいた。
「やろう、クロウ」
「ああ」
クロスは、試練を受けようと、クロウに促す。
クロウも、静かにうなずいた。
二人の意思は、変わらないようだ。
カイリも、フォウも、その事を感じ取り、微笑んでいた。
「では、試練を開始する!!」
こうして、騎士の試練が、開始された。
クロスとクロウは、すぐさま、遺跡へ入る。
カイリ達は、彼らを見守っていた。
彼らなら、古の剣を扱えると、信じて。
クロスとクロウは、奥へと進む。
すると、白の剣と黒の剣が置かれてあった。
「あれが、古の剣だな」
「ああ」
白の剣と黒の剣を目にしたクロスは、察する。
あれが、古の剣なのだと。
クロウも、同じことを考えていたらしい。
「行くぞ、クロウ」
「ああ、やろう。クロス」
クロスとクロウは、意を決して、古の剣の前に歩み寄った。
緊張しているようだ。
もしかしたら、制御できないかもしれないと、不安に駆られているのだろう。
だが、迷っている暇などない。
二人は、同時に、古の剣を手にし、地面から引き抜いた。
「意外だな。ちゃんと、持ててる」
「みたいだな」
古の剣を手にした二人であったが、古の剣は、暴走していない。
普通に握れるし、振る事もできるのだ。
意外だった。
もしかしたら、手にした瞬間、暴走するのではないかと、予想していたくらいだったから。
それゆえに、クロスは、あっけにとられていた。
クロウも、同様のようだ。
驚いているようで、古の剣を握りしめて、確認していた。
暴走しないかと。
「本当に、制御できてるのか?」
「どうだろうな。本番は、ここからだ」
「そうだよな」
だが、本当に、制御できているかは不明だ。
クロスは、不安に駆られたようで、クロウに問いかけるが、クロウも、判断できないらしい。
つまり、妖獣と相対した時に、わかるのではないだろうか。
クロスは、クロウの意見を聞いて、うなずく。
二人は、すぐさま、出口へと向かった。
遺跡を出た二人。
遺跡の入り口にいたフォウ達はいない。
どこかで、見守っているのだろう。
クロスとクロウは、進み始め、妖獣を探し始めた。
「妖獣って、どこにいるんだろうな」
「さあな。探すしかないだろう」
「だよな」
クロスは、あたりを見回すが、妖獣はいない。
どうやら、探すしかないようだ。
それも、試練に含まれているのだろう。
クロウは、そう、考えているようだ。
さすがと言ったところであろう。
クロスは、うなずき、妖獣を探す。
だが、その時であった。
豹のような妖獣がクロスに襲い掛かったのは。
「っ!!」
クロスは、とっさに、古の剣を前に出し、妖獣の爪を防ぎきる。
そのまま、吹き飛ばされかけるクロスであったが、体勢を立て直した。
「クロス!!」
「大丈夫。俺は、平気だ!!」
クロウは、クロスの元へと駆け寄ろうとする。
不安に駆られたのだろう。
怪我していないかと。
だが、クロスは、無事のようだ。
クロスは、古の剣を握りしめる。
妖獣に対抗しようと。
クロスは、魔技・フォトン・ブレイドを発動しようとする。
だが、魔技は、発動されなかった。
「え?」
クロスは、あっけにとられる。
信じられなかったのだ。
今まで、魔技を発動できたのに、古の剣を手にした瞬間、発動できなくなったのだから。
妖獣は、その隙を逃すはずもなく、クロスに向かって、爪を振り下ろす。
クロスは、とっさに、古の剣を前に出すが、衝撃により、吹き飛ばされてしまった。
「ぐあっ!!」
「クロス!!」
吹き飛ばされたクロスは、地面にたたきつけられる。
クロウは、クロスを助けるために、魔法・シャドウ・スパイラルを発動しようとした。
だが、魔法すらも、発動できなかったのだ。
古の剣を媒介にしたわけではないのに。
「なっ!!」
クロウは、あっけにとられる。
魔法すらも、発動できないのかと、察して。
だが、時すでに遅し。
妖獣は、クロウに向かって、爪を振り下ろす。
クロウは、古の剣で防ぎきろうとするが、妖獣は、魔法を発動し、クロウは、直撃を受けてしまった。
「がはっ!!」
「クロウ!!」
直撃を受けたクロウは、吹き飛ばされ、地面にたたきつけられる。
クロスよりも、傷を負ってしまったようだ。
クロスは、立ち上がり、クロウの元へと駆け寄った。
「なるほど、制御するってことは、そう言う事か……」
「何とかしないと……」
クロウは、察知したようだ。
古の剣を制御するという事は、戦う力を使いこなすという事だ。
古の剣が、共鳴しない限りは、魔法も魔技も、発動できないのだろう。
封じてしまっているようだ。
だが、何とかして、妖獣を倒さなければならない。
どうすればいいのだろうか。
考えている暇もなく、妖獣が、爪を振り下ろした。
その爪をクロスは、古の剣で受け止めた。
「クロス!!」
「俺は、クロウを守るんだ!!絶対に!!」
クロスは、強い想いを打ち明けた。
クロウを守るために戦っているのだ。
騎士になったのだと。
だが、妖獣は、クロスに向かって、何度も、爪を振りおろそうとする。
このままでは、クロスが、殺されてしまう。
危機を感じたクロウは、立ち上がり、妖獣の腕を切り裂こうとするが、切り裂くこともできず、クロスと共に受け止めるしかなかった。
「クロウ!!」
「それは、俺も、同じだ。俺だってクロスを守りたいんだ!!」
クロウも、強い想いを打ち明ける。
騎士になる事を決めたのは、クロスの為だったのだ。
その時であった。
古の剣が、光り始めたのは。
「古の剣が……光ってる?」
クロスは、あっけにとられているようだ。
今まで、反応しなかった古の剣が、光り始めたのだから。
もちろん、クロウが持つ古の剣も。
クロウは、推測した。
古の剣を制御できるようになったのではないかと。
「行くぞ!!」
クロウは、古の剣を握りしめて、構える。
妖獣を倒すために。
クロスも、うなずき、構えた。
妖獣は、クロスとクロウに襲い掛かる。
だが、クロスは、クロウの前に立ち、剣を巨大化させた。
無意識のうちに、固有技・レイディアント・ガードを発動したのだ。
その間に、クロウが跳躍して、構えた。
「はああっ!!」
クロウは、無意識のうちに、古の剣を二振り生み出す。
固有技・ダークネス・ツインを発動したのだ。
クロウは、そのまま、古の剣を振りおろし、妖獣を切り裂いた。
「はっ!!」
クロスが、続いて、古の剣を蛇腹剣に変え、固有技・レイディアント・ベローズを発動する。
古の剣は、妖獣を捕らえ、切り裂く。
妖獣は、絶叫を上げながら、光の粒となって、消滅した。
「倒せた……」
「みたいだな」
クロスは、息を切らせて呟く。
相当、体力を使ったのだろう。
クロウも、同様に、息を切らせて、うなずいた。
二人は、古の剣を制御できた。
使いこなせたのだ。
と言う事は、二人は、騎士の試練を乗り越えることができたのだろう。
クロスとクロウは、微笑んだ。
うれしくて。
その時であった。
「見事だ。二人とも」
「カイリ」
「見てたのか?」
「ああ。危なかったら、助けてほしいって、フォウに頼まれていたからな」
カイリが、二人の元へ歩み寄る。
どうやら、近くで見ていたようだ。
クロウが尋ねると、カイリが、うなずいた。
実は、フォウに頼まれていたのだ。
もし、危うくなったら、試練を中断して、助けてほしいと。
だが、その必要はなかった。
二人は、見事に、試練を突破したのだから。
「おめでとう。今日から、二人は、騎士だ」
「ああ、ありがとう」
「ありがとう、カイリ」
カイリは、笑みを浮かべて、祝福する。
二人が、騎士になれた事を喜んでいるようだ。
二人も、つられて、笑みを浮かべた。
こうして、二人は、無事に、騎士になれたのであった。
クロスは、光の騎士に、クロウは、闇の騎士に。
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