第二十話 共闘
「そこまで、見抜かれてたんだ」
「へぇ、やるじゃない」
クロウの言葉を聞いた二人の妖魔は、微笑む。
見抜かれていたとは言え、余裕のようだ。
まるで、自分達の方が、勝つと思い込んでいるのだろう。
「お前ら、何の目的で、ここに来たんだ。それに、どうやって……」
クロスは、妖魔達に問いただす。
なぜ、ここに来たのか。
しかも、結界が張ってあるにもかかわらず、どのようにして、すり抜けたのか。
知らなければならない事は、山ほどある。
ゆえに、問いただした。
「教えたくない」
「どうせ、教えたって、殺すんでしょ~」
妖魔の男性は、静かに、回答を拒絶する。
教えるつもりなどないようだ。
それに、妖魔の女性は、教えたとしても、すぐに、殺されるのではないかと、予想している。
妖魔は、島の民や帝国の民にとって、危険な存在だ。
彼らは、その事をわかっているのだろう。
「その通りだ」
「ちっ」
クロウは、静かに、答える。
答えた後、殺すつもりなのだ。
生かすつもりは、毛頭ない。
わかっていたとは言え、苛立ったのだろう。
妖魔の男性は、舌打ちをし、にらみつけた。
「なら、殺してやるよ!!」
妖魔の女性は、構える。
ルチア達を殺すために。
クロスとクロウは、古の剣を鞘から引き抜き構える。
ルチアとヴィオレットは、すぐさま、ヴァルキュリアに変身した。
二人の妖魔は、すぐさま、襲い掛かる。
だが、ヴィオレットが、地面を蹴り、先陣を切って、二人の妖魔に斬りかかった。
二人の妖魔は、回避し、距離を取った。
「ヴァルキュリアか。厄介だな」
妖魔の男性は、ヴィオレットに向かって、魔技・ディザスター・シャドウを発動する。
どうやら、人型の妖魔のようだ。
ヴィオレットは、回避し、魔技を切り裂こうとするが、妖魔の男性は、影と同化してしまう。
そして、そのまま、ヴィオレットの背後に回り、再び、魔技・ディザスター・シャドウを発動した。
ヴィオレットは、とっさに、回避し、距離を取った。
「ヴィオレット!!」
ルチアが、ヴィオレットの身を案じるが、クロスが、ヴィオレットの前に出る。
守ろうとしてくれているようだ。
「大丈夫か?」
「ああ、問題ない」
クロスは、ヴィオレットの身を案じて、問いかける。
だが、怪我はないようだ。
ヴィオレットは、冷静に答えると、クロスは、安堵していた。
ルチアは、ヴィオレットの元へ駆け寄ろうとする。
だが、妖魔の女性が、ルチアとクロウの前に立ちはだかった。
「あんた達は、あたしが、殺してあげる!!」
妖魔の女性は、構える。
戦力を分散させるつもりだ。
二対一になるというのに。
余裕があるのだろう。
自分一人でも、ルチアとクロウを相手にできると。
ルチアは、焦燥に駆られ、地面を蹴り、妖魔の女性に向かっていった。
「やあっ!!」
ルチアは、蹴りを放ちながら、魔技・ブロッサム・ブレイドを発動する。
だが、妖魔の女性は、影に同化して隠れてしまう。
そして、すぐさま、ルチアの背後に回り、ルチアに襲い掛かろうとしていた。
「っ!!」
「ルチア!!」
ルチアは、危機を感じたが、体がこわばり、立ち尽くしてしまう。
このままでは、ルチアが、殺されてしまう。
危機を感じたクロウが、ルチアの前に立ち、魔法・シャドウ・スパイラルを発動。
妖魔の女性の行く手を遮り、ルチアを守った。
「一人で、突っ走るな」
「うん、ごめん……」
クロウは、ルチアを止める。
だが、責めているわけではない。
ルチアの事を心配しているのだ。
ルチアは、その事をわかっており、ルチアは、謝罪した。
ヴィオレットとクロスも、苦戦しているようだ。
影と同化してしまうからであろう。
妖魔の男性は、影に同化しながら、妖魔の女性の元へと移動した。
「いっくよ~」
「おう!!」
妖魔の男性が、魔技・ディザスター・シャドウを発動。
妖魔の女性は、続けて、魔法・エビル・シャドウを発動した。
まがまがしい闇の力は、ルチア達に襲い掛かろうとしていた。
「その手に乗るか!!」
「それは、どうかな?」
ヴィオレットは、鎌を振り回し、妖魔の魔法や魔技を切り裂こうとする。
だが、妖魔の男性は、笑みを浮かべていた。
まるで、余裕と言わんばかりに。
ヴィオレットは、魔技・スパーク・ブレイドを発動する。
だが、妖魔の魔技は、一瞬にして消え去ってしまった。
「何っ!?」
ヴィオレットは、あっけにとられる。
それは、クロスも、同様だ。
ヴィオレットを守るように前に出るクロス。
だが、妖魔の魔技が再び、姿を現した時は、すでに、ヴィオレットの背後に回っていた。
妖魔の魔技は、ヴィオレットを切り裂いた。
「ぐあっ!!」
「ヴィオレット!!」
ヴィオレットが、苦悶の表情を浮かべて倒れる。
ルチア達は、あっけにとられていた。
妖魔の魔法にほんろうされてしまい、ヴィオレットを守れなかったのだ。
妖魔の魔法は、姿を現しては消え、姿を現しては消えるの繰り返しだ。
ゆえに、ルチアとクロウは、ほんろうされてしまい、あたりを見回し、警戒していた。
「どこ見てんの?」
「え?」
妖魔の女性は、不敵な笑みを浮かべている。
まるで、ルチア達を弄んでいるかのようだ。
ルチアが、危機を感じ取ったが、時すでに遅し。
妖魔の魔法は、ルチアの背後に迫り、ルチアへと直撃した。
「うあっ!!」
「ルチア!!」
ルチアは、吹き飛ばされ、地面にたたきつけられる。
いつの間に、ルチアは、妖魔の魔法を受けてしまったのだろうか。
クロウは、ルチアの元へと駆け寄り、ルチアの前に立つ。
ルチアを守るために。
思考を巡らせるが、見当もつかない。
すると、二人の妖魔が、影の方へと入る。
まるで、嘲笑うかのように。
「影を使えば、こっちのもんだからな」
「ちっ」
妖魔達は、自分が発動した魔法や魔技を影の中に忍ばせていたのだ。
つまり、同化させていたのだろう。
それゆえに、ルチア達の前から、姿を消し、突如、背後から、現れ、ルチアとヴィオレットを襲った。
なんて、厄介な能力なのだろうか。
クロウは、苛立ち、舌打ちをした。
焦燥に駆られているのだろう。
「クロス、二人を頼んだぞ」
「けど……」
「いいから、いけ!!」
クロウは、ルチアとヴィオレットの事をクロスに託す。
クロスは、回復魔法を唱えることができるのだ。
ルチアとヴィオレットの傷を癒せるのは、クロスしかいない。
たとえ、再生能力があったとしても、すぐさま、癒さなければならないと、判断したのだろう。
だが、クロスは、躊躇してしまう。
一人で、立ち向かう事は危険だからだ。
クロウは、声を荒げる。
クロスの為に。
クロスは、歯を食いしばり、ルチア達の元へと駆け寄った。
ルチア達を助けるために。
「一人で、戦うのかよ」
「無理だっての!!」
二人の妖魔は、嘲笑う。
騎士と言えど、自分達に立ち向かえるはずがないと、思っているようだ。
二人の妖魔は、すぐさま、魔法と魔技を発動した。
クロウを殺すために。
だが、その時であった。
華の魔法、雷の魔技が発動されたのは。
驚愕し、あっけにとられる二人の妖魔。
クロウも、同様だ。
予想もしていなかったのだろう。
ルチアとヴィオレットの傷が、すぐさま、癒えるとは。
「これくらいで、倒れると思った?」
「ヴァルキュリアの特性を知らないようだな」
ルチアとヴィオレットは、前に出る。
しかも、笑みを浮かべて。
まるで、余裕と言わんばかりに。
「ちっ。再生能力かよ」
「知ってるの?」
「もちろん。あんた達の事もね」
妖魔の男性は、苛立ち、舌打ちする。
彼らも、知っているようだ。
ヴァルキュリアの特性を。
妖魔の女性は、ルチアの問いに答える。
ヴァルキュリアの事も、ルチアとヴィオレットの事も知っていると。
「どういう意味だ?」
「教えるかよ」
ヴィオレットは、妖魔達に問いかける。
なぜ、自分達を知っているのか。
だが、妖魔の男性は、答えるつもりはないようだ。
決して。
「まぁ、いっか。なんか、楽しめそうだし」
「お前ら、覚悟しろよ」
二人の妖魔は、再び、魔法と魔技を発動する。
当然、魔法と魔技は、姿を消し、ルチアとヴィオレットを背後から襲い掛かろうとしていた。
「ルチア!!ヴィオレット!!よけろ!!」
危機を察し、ルチアとヴィオレットの背後に立つクロス。
クロウも、続けて、背後に立つ。
ルチアとヴィオレットを守るためだ。
だが、ルチアとヴィオレットは、あえて、影の元へと迫る。
そして、影に潜んでいた魔法と魔技を切り裂いた。
魔法と魔技を発動して。
「なっ!!」
「なんで!?」
妖魔の男性は、あっけにとられ、妖魔の女性は、体を震わせて、問いかける。
何が起こったのか、理解できないようだ。
なぜ、ルチアとヴィオレットは、魔法と魔技が、どこに隠れているのかを察することができたのか。
闇属性ではないのに。
これには、さすがのクロスとクロウも、驚きを隠せなかった。
「なめてるのは、お前達の方だ」
「私達だって、鍛えてきたんだから」
ヴィオレットは、答えるつもりはないようだ。
もちろん、ルチアも。
戦いの経験を積み重ねているからこそ、居場所を探れたのだろう。
「「手加減しないからな!!」」
ルチアとヴィオレットは、構える。
しかも、声をそろえて。
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