第十四話 戦いの日々
二人が、ヴァルキュリアになってから、一週間が経っていた。
ヴァルキュリアになったルチアとヴィオレットは、戦いの日々が続いていた。
と言っても、妖魔との戦いは、まだ、一回もない。
妖獣の討伐が、多いのだ。
もちろん、一人ではない。
カレン達が、共に戦ってくれる。
故に、ルチア達にとっては、心強かった。
今日は、ルチア、ライム、ベアトリスが、火の島・ファイリ島で、妖獣討伐の任務に当たっている。
ヴァルキュリアに変身して、戦うルチア達。
すばしっこい獣であったが、ライム達が、サポートしてくれたおかげで、ルチアは、難なく、妖獣を倒せた。
「何とか倒せたぁ……」
「ルチアちゃん、お疲れ」
妖獣を倒せたルチアは、安堵しているようだ。
ライムとベアトリスが、ルチアの元へ駆け寄る。
それも、笑みを浮かべて。
「お疲れ様です。ライムさん、ベアトリスさん」
「もう、ライムでいいってば~。ライム、ルチアちゃんとは、お友達になりたいんだ。だから、敬語もなし!!」
「あたしも、そうして欲しいねぇ。なんだか、距離を置かれてるみたいで、かなしくなっちまうよ」
「う、うん。ありがとう。ライム、ベアトリス」
ルチアは、ライムとベアトリスにお礼を言う。
礼儀正しく。
だが、ライムとベアトリスは、違和感を感じたようだ。
まるで、距離を置かれているみたいに感じたのだろう。
ライムとベアトリスは、ルチアと仲良くなりたいのだ。
共に戦っていく仲間として、友として。
ゆえに、ルチアに懇願した。
敬語も、さん付けも、無でと。
ルチアは、戸惑いながらも、うなずいた。
「さ、帰ろ帰ろ」
「そだな」
ライムが、帝国に戻るようルチアに促す。
ベアトリスも、静かにうなずいた。
任務は達成したゆえに、戻るべきだと思ったのだろう。
ルチア達は、魔方陣が施されているファイリ火山へと向かった。
「にしても、ルチア、あんた強いなぁ」
「一撃で、妖獣を仕留めちゃうんだもん。ライム、驚いちゃった」
「そうかな?」
「うんうん」
ライム、ベアトリスは、ルチアの強さを改めて、感じ取っているらしい。
実は、二人は、サポートはしていたが、ほとんど、ルチアが、仕留めたようなものだ。
妖獣の戦闘パターンは、単純だ。
ルチアは、すぐさま、読み取り、得意の蹴りで、仕留めたのだ。
それも、一撃で。
新人と言えど、戦闘能力は高い。
ライムとベアトリスは、感心してたようだ。
ルチアは、強いと。
ルチア達は、軍服の姿に戻り、帝国に戻り、王宮へと戻った。
「戻ってきたよ~」
「お帰りなさい」
待機室に戻ったルチア達。
そこでは、ヴィオレット、カレン、セレスティーナが、待機していた。
ルチア達の帰りを待っていたのだろう。
ライムは、嬉しそうに駆け寄ると、カレンが、ルチア達を出迎えた。
「怪我はなかったか?」
「うん。ライムとベアトリスのおかげでね」
ヴィオレットは、ルチアに声をかける。
心配していたのだろう。
だが、ルチアは、無事であった。
ライムとベアトリスがいてくれたおかげで。
怪我がないとわかり、ヴィオレットは、安堵していた。
本当に、ルチアの事を心配していたようだ。
「無事に、討伐できたみたいねぇ。さすがだわ」
「い、いえ」
セレスティーナも、安堵しているようだ。
しかも、新人でありながら、ルチアも、ヴィオレットも、好成績を収めている。
期待の新人と言っても、過言ではないだろう。
セレスティーナに褒められて、ルチアは、戸惑っていた。
「お疲れ様。で、終わった直後で悪いんだけど、任務が入ってきてるの」
「任務?」
「そうよ」
カレンは、次の任務を言い渡す。
実は、カレン達も、先ほど、聞かされ、待機室で集まっていたのだ。
ルチアは、驚きつつも、首をかしげる。
どのような任務なのか、気になるようだ。
「妖魔らしき力を感じたんですって」
「どこでだ?」
「レージオ島よ」
カレン曰く、妖魔らしき力を感じたらしい。
ついに、妖魔が、現れたようだ。
どこなのか、ベアトリスは、気になったようで、尋ねると、レージオ島らしい。
レージオ島は、狙われやすいようだ。
「妖魔を見かけたらしいけど、見失ったみたいなの」
「もしかしたら、島の民に紛れ込んでる可能性があるな」
島の民の報告によれば、妖魔を見かけた者も、いるらしい。
だが、見失ってしまったようだ。
外に逃げたか、あるいは、あのレージオ村のドーム型の建物内に身をひそめているかもしれない。
ヴィオレットは、そう、推測していた。
「でも、妖魔なんて、ライムたちとは違うから、目立つんじゃない?」
「そうでもないわよぉ。フードを深くかぶって、皮膚を隠せば、ね」
ライムは、妖魔が、村で、身をひそめているとは、思っていないらしい。
確かに、妖魔の肌は、黒褐色だ。
ゆえに、見つけやすい。
セレスティーナは、正体を隠すために、フードをかぶっている可能性が高いと踏んでいた。
「フードをかぶってるやつなんて、いるしな。数は、少ないけどさ」
ベアトリスは、推測する。
確かに、フードをかぶっている奴はいる。
数は少ないと言えど、紛れ込むには、十分であろう。
ゆえに、妖魔を探しだすのは、至難の業のように思えた。
「全員で、出撃するわ。いいわね」
「はい」
カレンは、すぐさま、レージオ島に出撃する事を決定した。
任務から帰ってきたルチア達には、申し訳ないが、妖魔を早く、倒さなければ、被害が拡大する可能性が高いからだ。
もちろん、ルチア達も、そのつもりだ。
すぐさま、レージオ島に行くべきだと思っているのだろう。
ルチア達は、レージオ島へと向かった。
レージオ島へと到着したルチア達。
カレンは、レージオ島を統治している長に会い、事情を詳しく聞いた。
「ここの長には、話をしてきたわ。強力もしてくれるそうよ」
「さすがねぇ」
建物の外に出たルチア達。
カレン曰く、村の長は、協力してくれるようだ。
彼も、妖魔、討伐の為に、妖魔や妖獣達と戦っている。
平和を保つために。
その事をセレスティーナは、知っているからこそ、先ほどの発言が出たのだろう。
「今回は、二手に分かれて、行動するわよ。私とセレスティーナ、ルチアは西の方を、ライム、ベアトリス、ヴィオレットは、東の方を頼むわね」
「りょうか~い」
カレンは、ルチア達に指示を言い渡す。
二手に分かれて、探す作戦に出たようだ。
ライムは、手を上げて、うなずく。
ルチア達は、すぐさま、二手に分かれて、行動し始めた。
妖魔を探すルチア達。
だが、それらしき人物は見当たらない。
外に逃げてしまったのだろうか。
ルチアは、不安に駆られていた。
「ルチア、大丈夫?」
「あ、はい。すみません」
カレンは、ルチアを気遣う。
心配しているのだろう。
心配をかけてしまったとルチアは、頭を下げた。
申し訳なく感じて。
「謝らなくていいのよ。それに、敬語もいいわ。私の事は、カレンって呼んで」
「私も、その方が、うれしいわぁ」
「うん、ありがとう」
カレンも、ルチアに、敬語やさん付けはなしでと頼む。
やはり、違和感を感じていたようだ。
もちろん、カレンだけではない。
セレスティーナも、懇願した。
ルチアと、友になりたくて。
ルチアは、うなずき、微笑んだ。
本当に、ありがたいと感じながら。
ヴィオレット達も、探すが、やはり、見つからない。
探すのは、至難の業のようだ。
「なーんか、見つかんないね」
「めんどくせぇな。さっさと、見つけたいんだが……」
ライムも、ベアトリスも、ため息をつく。
わかっていたこととは言え、見つからないとなると、ため息もつきたくなるのだ。
早く、見つけて、妖魔を倒さなければと、焦燥に駆られているのだろう。
それは、ヴィオレットも、同じであった。
だが、その時であった。
「ん?あれは……」
ヴィオレットは、ある人物が気になり、視線を移す。
その者は、フードをかぶっていた。
ゆっくりとした歩き方であったが、何やら、違和感を感じる。
雰囲気が、異なるのだ。
島の民とは。
そう思うと、ヴィオレットは、すぐさま、フードをかぶっている者の方へと歩き始めた。
「あれ?ヴィオレットちゃん?」
ライムは、ヴィオレットに気付き、ベアトリスと共に、ヴィオレットを追う。
そして、彼女達も、気付いたのだ。
フードをかぶっている者に対して、違和感を覚えたのだろう。
ヴィオレットは、フードをかぶっている者に近づいた。
「ちょっと、いいですか?」
「ん?」
ヴィオレットは、フードをかぶっている者に声をかける。
振り向くが、どうやら、男性の声のようだ。
「腕、お怪我、されているようですよ」
「え?」
ヴィオレットは、男性が、怪我をしていると嘘をつく。
肌を見るためであろう。
声をかけられた男性は、驚き、動揺していた。
わかりやすく。
「治しますので、見せてください」
「っ!!」
ヴィオレットは、懇願する。
肌を見せろと。
男性は、ヴィオレットから、すぐさま、逃げだした。
「逃げた!!」
「あいつ……」
ライムは、男性が逃げていくのを見て、気付いた。
もちろん、ベアトリスも。
男性が、何者なのか。
「間違いない。妖魔だ!!」
ヴィオレットも、見抜いていた。
フードをかぶっていた男性は、妖魔だったと。
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