エピローグ
────最後の殺し合いが終わり。
咲良が最初に倒れて。
続けて後を追うようにセラも倒れていった。
それから数日間は意識を失っていたが、突如目を開け彼女は目的もなく無人の世界を歩き出した。
とっくに膝に力は入らず、ふらふらとおぼつかない足取りで彷徨い続ける。
目的は確かにない。彼女は何も考えず、足を動かしている。なのに、その足は明確にある方角を目指して歩き続けていた。
「……行かない、と」
ぽつりとセラは呟く。
行く場所なんて分からないのに。
※※※※
そうしてセラは一つの墓標の前に辿り着いた。
そこにはこう書かれていた。
『紅崎リコ、ここに眠る』
その墓標を一目見たセラの瞳から涙が溢れる。
名前なんて分からない。思い出なんて何一つ思い出せないのに。
その人が大切な人だったということだけはセラにも理解できていた。
だから、セラは最期にその言葉を口に出していた。
「────ただいま」
直後。
糸が切れたようにセラは体から力が抜け、地面に倒れ込んでしまった。
視界が黒く染まっていく。風の音が聞こえなくなっていく。土の匂いが感じなくなっていく。体が冷たくなっていく。
五感がゆっくりと死んでいき、ついには心まで消えそうになって。
その直前で、セラは確かに聞いたのだ。
『────おかえり、セラ』
セレスティア・ヴァレンタインは静かに微笑んで。
ゆっくりと、眠りに落ちた。
────だから、あなたをここで殺します 完
だから、あなたをここで殺します 火侍 @hisamurai666
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