来世で会いましょう

レイノール斉藤

第1話

「じゃあ、また明日な」

「うん、また来世で」

 友人のその別れの返事に当然の如く違和感を感じたが、彼は普段から意味不明な言動が多く、そのせいで友人と呼べるのは俺しか居ない。いちいち突っ込むのもいい加減飽きてきたので、そのまま振り返りもせず自宅への帰路を急いだ。

 彼が死んだのを知ったのは次の日の朝だった。


 彼の両親曰く、突然の心臓発作らしい。もちろん俺から見ても昨日までそんな兆候は一切無かった。


 葬儀を終え、葬儀屋を出て歩き出す。自宅の近くまで辿り着く頃にはすっかり暗くなっていた、街灯も信号もろくにない裏通りの交差点を、車が居ないのを確認してから渡り始める。


 彼は自分が死ぬことを分かっていたんだろうか?仮にそうだとしても「来世」という台詞がいまいちピンと来ない。そもそもいつの話になる?

 十年後くらいに突然見知らぬ子供が「久しぶり!」と挨拶してくるのだろうか?

 葬儀の最中も、ずっと悲しみより疑問が頭を支配していた。


 その時、ふと誰かに足首を掴まれた。普通ならありえない状況だが、何だ?と思い、後ろの地面を見てすぐにそういうことだと分かった。

 彼が地面から顔と手だけを出して俺の足を掴んでいたからだ。

 その顔は笑っていた、とても嬉しそうに。ずっと欲しがっていた物をやっと手に入りそうな時、人はこういう顔をするんだろうな、とその顔を見て何故か妙に納得してしまった。


 右の道路から大型トラックが走ってこっちに向かっている。こんな夜中に、ライトもつけず、運転席にも誰も居ないのに…。


 ああ…どうやら思ったより早く再会できそうだ。


終わり


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来世で会いましょう レイノール斉藤 @raynord_saitou

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