第45話 ユウとリンのお正月
「明けまして、おめでとうございます。」
ユウの家では、ユウとユウの両親、そしてリンが新年の挨拶をしていた。リンは大晦日の夜から泊まって、ユウと一緒に『行く年来る年』を見たり、年越し蕎麦を食べたりしていた。
そして今は、おせちを食べながらユウの父ととっておきの惣邑の大吟醸を酌み交わしている。
「このお酒、サイコーですね。」
「だろう? リンちゃんはいける口だね。」
2人は、ご機嫌だった。お雑煮も出て、お腹いっぱいである。手の空いたユウの母が言った。
「リンちゃん、こっちにいらっしゃい。」
2階に上がっていくのを、リンがついて行く。2階の一間に入った。部屋の中に振袖が掛けてある。
「きれいな振袖ですね。」
「そうでしょ、リンちゃんの成人式はこれを着なさい。」
リンがとまどったように言う。
「でも、これはユウの振袖じゃ?」
「1年早く仕立てたの、来年はユウが着るわ。」
リンは口ごもった。この振袖はユウにとって大事なものではないか?
「でも、、、」
「いいのよ、ユウもそうしてくれって。」
リンはユウの母の肩に頭をあてた。涙がこぼれる。泣くのをこらえるように言った。
「ありがとうございます、、、、、」
「リンちゃんは泣き虫さんね。」
ユウの母の目も潤んでいた。
しばらくして、2人は1階に降りて来た。リンが笑顔でユウに言う。
「ありがとう、振袖着させてもらうね。」ユウはうなずいた。
2人で、近所の
「ユウは何を願ったの?」リンが尋ねた。
「今年もリンとスチームローラーで楽しく走れますように、です。」ユウが答える。
「リンは、何を願ったんですか?」
「今年もユウと仲良くできますように。」2人は笑った。
帰り際、ユウが言った。
「明日は初走りに行きましょう。」
元日もリンはユウの家に泊めてもらった。朝起きたリンはいい初夢を見たらしく機嫌が良かった。
おせちの残りの朝食を食べて支度をしてから、スチームローラーで家を出発して、七福神詣でに行くことにした。ユウの家がある市は、5つのお寺で七福神を祀っている。
冬の空気は冷たくて気持ちがいい。特にお正月は自動車が少ないからか、澄んでいるような気がする。ユウは自転車に乗るなら、冬が好きだった。15分も走っていれば、体が温まって寒くなくなる。
2時間程で5か所のお寺を回って満願成就となった。いつものカフェは正月休みなので、駅まで行ってチェーンのカフェに入った。
カフェを出て、2人は手を振って別れた。
新しい1年が始まる。
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