第42話 リン、看病される

ユウは、いつも起床する時間のアラームで目が覚めた。となりのリンはまだ眠っている。1階に行って、自分の朝食とリンのお粥を作り始めた。出来上がった頃、スマホにメールの着信があった。玄関を開けると、ミトが立っている。


「おはよう、紅尾べにおさんの調子はどう?」


「大分落ち着きました。お手数ですけど、よろしくお願いします。」ユウはミトにリンの診断書を渡した。


「分かったわ、お大事に。」ミトは大学に向かった。


ユウが2階に戻ると、リンが目覚めていた。何か食べるか尋ねると、まだ喉が痛いというので、お粥はやめて昨日のヨーグルトの残りに牛乳と蜂蜜を入れてよく混ぜる。その中にバナナを薄切りにして入れた。今度は自分で食べられた。


また薬を飲ませて、体をふく。パジャマと下着を着替えさせた。


「大学は?」

「リンの診断書と私の欠席届は、ミトさんにお願いしました。」

「ごめんなさい。」

「謝る必要ないですよ。」リンはまた眠ってしまった。


昼近くになった。リンは目覚める様子がない。


ユウは今日の午後、外したくない授業があった。難しい内容で休んでしまうとついていけなくなる。


ユウの母は用事があるというし、まだリンを1人で置いておくのは心配だった。


午後2時位に、リンは再び目を覚ました。ベッドの脇の椅子に座っているのはユウではない。


「なんで、あんたがここにいるのよ。」リンが言った。


「ユウさんが外せない授業があるので、私が頼まれたのです。えっへん。」ミトが答えた。マスク越しでもドヤ顔をしているのが分かる。


「フン。」リンは目を閉じた。


ミトがお粥を持ってくる。


「ユウさん特製のお粥ですよ〜。はい、あーん。」


「自分で食べられるわ。」


ユウが戻って、入れ替わりでミトは帰った。


翌日は土曜日で、リンの体調ももうほとんど心配はなかった。ユウの母が作ってくれた食事を食べて、安静にしてユウと一緒に過ごした。


1週間が過ぎて、リンは無事に大学に復帰した。



リンが全快した後、ユウはリンに世話になったからと言って、プレゼントをもらった。高価そうなシルバージュエリーのキーホルダーについた鍵。


「いつでも好きな時に来てね♡」リンは満面の笑顔で言った。


「ユウには、私のカラダ、すみからすみまで見られちゃった♡」

「ユウが寝込んだら、私が全部世話してあげるね、うふふ♡」


リンはインフルエンザの高熱で脳をやられちゃったんじゃないかと、心配なユウであった。

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