第4話 コップの外の渋

 コップの外のしぶ



「アイスコーヒーひとつ」



 アイスコーヒーがすぐなくなるのはなぜだろう

 暑くて喉がかわいているから

 氷がとけるのが嫌だから

 おいしいから


 アイスコーヒーにはミルクだけ入れる。砂糖は入れない。別にこだわってない。氷の隙間にミルクが入っていく。色がまざっていく。心地いい音で鳴いて喉をうるおす。苦味が少しマイルドになる。

 ブラックじゃないし子どもだって飲んでいいけれど、大人の飲み物のひとつ。



 苦々しくて長々しいことがたく山ある。不まんを感じてしまう僕はいつになったらみたされるんだろう。恋人も友だちも仕事もプライベートもだから僕は誰かと一緒にいられないんだろう。渋々と嫌々とやっているように見えるらしい。僕の体にはコップには渋だらけ。なめらかに進まない。そんな自分を磨いていこう。みずにひたして、あらって、かわかして。だけどそれじゃあ僕は空っぽになってしまう。僕が僕ではなくなってしまう。僕は僕じゃない方がいいんだろう。だからこんなに苦しくて窒息してしまいそうなんだろう。おぼれてしまいそうなんだろう。


 ストローで飲んでいてハッとした。

 ミルクのようにストローのように、砂糖のようにアイスのように、クリームのように、薬のように、スプーンのように、


 僕はいくらでもまざることができる。

 いくらでもつぎ足せる。みずのかわりにジュースだっていい。血えきだっていい。おさけはちょっとやめておくか。


 また今度にとっておこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る