第103話 結婚式

 真冬の寒さという式にはあいにくの気候だが本人たちの希望もあり式が行われることになった。


「新郎、クルス。そなたは新婦アッシュを生涯ただ一人の妻とし、その身健やかなる時も、その身病みし時も変わらず、死が二人を分かつその時まで変わらずに愛し続けることを、万色の神の前で、友の前で誓いますか?」

「はい。俺はアッシュを妻としこれからは共に歩んでいきます」


 ハシバ国の教会で神父は正装を着たクルスにそう問いかけ、彼は答える。


「新婦、アッシュ。そなたは新郎クルスを生涯ただ一人の夫とし、その身健やかなる時も、その身病みし時も変わらず、死が二人を分かつその時まで変わらずに愛し続けることを、万色の神の前で、友の前で誓いますか?」

「はい誓います。死が二人を分かつその時までそばにいます」


 クルスとアッシュのロイヤルウェディングであった。




「クルス、結婚おめでとう!」

「兄貴。結婚おめでとう」


 メリルとケンイチが息子を、兄を祝福する。


「ようクルス、結婚おめでとう」

「付き合って2年位か? 早いもんだなぁ」


 次いで酒場「母乳」の飲み友達がめかした格好で2人の門出を祝う。

 彼等のうちの一人である少女がウェディングドレスに身を包んだアッシュにズカズカと近寄る。


「結婚おめでとう。アッシュ、私はクルスの事はあきらめるわ。だから絶対に不幸にしないでちょうだい! もしクルスを泣かせたりしたら絶対許さないからね!」


 そう言ってにらみつけるようにアッシュを見て怒鳴りつけるように言った。

 今回の挙式は教会を丸1日貸し切って近隣諸国の重役はもちろんの事、抽選で選んだ国民も招いて行われるものというだいぶ派手な結婚式だった。


「ようクルス、もう結婚なんて早えな。お前に子供が生まれたら……義理とはいえ俺はひいじいちゃんかぁ」

「クルスとか言ったかの? この度の結婚はめでたい限りじゃの。安心せい。星の流れを見る限りでは結婚生活はうまくいくと出ておる」


 ビルスト国王カーマインとペク国の王である老師も賓客ひんきゃくとして呼ばれ、クルスの結婚式に参加していたのだ。


「そういや式に関してはメリルが仕切ってたけどずいぶん派手なものになったなぁ」

「私たちは貧しかったから大した式が出来なかったからせめてクルスは盛大に祝ってほしかったからね」

「そういや俺のころは結婚式って言っても大して金かけなかったもんな」


 マコトとメリルは自分の式を思い返す。当時のハシバ国にはまともな教会も礼拝所も無かったため場所はシューヴァルの教会で、借り物の神父による挙式だった。

 そんな過去があるから子供にとって一生に一度の晴れ舞台は盛大に行いたい。そんな親心からか式はマコト発案なら思いつかないほどずいぶん派手になった。

 まぁ一生のうちに何度もやるようなことでもないし、むしろ何度もやるようではそれはそれで問題だからいいだろうと彼は了承してはいたのだ。




 式が終わった後の夜。新婚の2人はベッドの中にいた。


「なぁ、本当にいいのか? 俺は人間だから産まれるのは全員人間だぜ? ドッペルゲンガーは産めないけどいいか?」

「うん。大丈夫。そういうのはわかってるから」


 人間と魔物が契りを交わす場合、子供は父親と同じ種族となる。なのでクルスとアッシュの間に生まれる子供は「取り換え子」でもない限り、人間となる。

 それは結婚前から何回も念を押してはいるが、お互いに了承済みであった。


「じゃ、じゃあいくぞ。初めてだからヘタクソでも許してくれ」

「大丈夫。私も初めてだから」


 そう言ってお互いに身体を重ねた。




【次回予告】

「かたき討ちをするために強くなりたい」

それがマコトに召喚されたクルスの願いだった。それは今でも変わらない。


第104話 「忘れられない惨劇」

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