第76話 砂糖立国の偉業
世間ではもうじき楽しい春祭りかという頃、去年の冬、マコトの勅命で「この国の行く末を左右するほどの作物」を育てていた3人の農家たちはマコトの元を訪れ、
言われていた作物の種とダイコンやカブのような作物を納めに来た。
「王様、言われていた作物の栽培に成功しましたので採れた種と作物を納めに来ました。こちらです」
「うむ。無事に育ったようだな。ご苦労だった」
「あのー……王様。いったいこの作物は何なのでしょうか? この国の行く末を左右するとは聞いていましたが?」
何かすごいことになりそうだとは聞いていた、謎の作物。その正体をそろそろ教えて欲しい。オヒシバは3人の農家を代表して申し出る。
「うむ。もういいだろうから話そう。実はこの作物からは砂糖が採れるんだ」
「砂糖ですか? 砂糖はサトウキビからしか作れないのではないんですか?」
「まぁそういうと思ったが本当の事だ。試しにかじってみろ。甘いだろうから。オヒシバはマンドレイクだから食い物は食わないから、アレク、お前が食ってみろ」
「は、はい。わかりました。では……お、本当に甘いな」
「だろ? それのしぼり汁を煮詰めれば砂糖が作れるんだ。早速見せてやるぞ」
マコトは彼らを連れて石けん工場へと向かう。本来は油と灰を混ぜて煮炊きする設備を借りて作物を搾り、汁を煮詰める。
しばらくして、底に白い結晶が現れ始めた。
「なんですかこの白いものは? ゴミじゃないですよね」
「砂糖の結晶さ。なめてみろ」
マコトはスプーンですくい、農民たちになめさせる。
「どれどれ……おお! 甘いぞ!」
農民たちはその甘さに感激する。そしてマコトも結晶をなめ、確信する。
「やったぞ……ついに……!!」
マコトは思わず城へと向かって一直線に駆け出す。
「メリル! メリルはどこだ!?」
「何だよオヤジ。母さんならケンイチと一緒に2階に行ったのを見たけど」
騒がしい父親に対しクルスが嫌そうに言うと彼は汗が出ているのを関係なしに2階へと突っ走っていく。
「ディオール! メリルはどこだ!?」
「閣下? メリル様なら中庭でケンイチ様と遊んでいるとは聞きましたが。そんなに慌てていったい何が……ってもう行ってしまわれたか」
マコトは汗だくになりながらも中庭でケンイチと遊んでいたメリルを見つけて、いきなり強く強く抱きしめる。
「!? あ、あなた!? 何!?」
「メリル! 聞いてくれ! 砂糖だ! この国でもついに砂糖が作れるようになったんだ! これからは甘い菓子が作り放題で食べ放題だぜ!」
「え? え? な、何の事? 砂糖がどうしたの?」
「砂糖だよ砂糖! 砂糖がこの国でも作れるようになったんだよ!」
戦争ばかりしていてメリルやケンイチといった家族へのせめてもの罪滅ぼし。と言わんばかりにマコトはメリルに砂糖が作れるようになったと力強く言う。
これがハシバ国初代国王マコト=カトウが生前成し遂げた偉業の一つ「砂糖立国の偉業」を達成した瞬間であった。
クルスの日記
後アケリア歴1241年 3月14日
真昼間からオヤジが騒いでる。なんでもこの国でも砂糖が作れるようになったらしい。
何かの間違いなんじゃないのか?
確か砂糖はサトウキビとかいう南大陸でしか育たない作物からしか作れないはずだった。
オヤジの奴、ついにおかしくなっちまったのか?
【次回予告】
ワーシープのドリーを召喚してからも召喚は続けている。だがどれもこれも今一つな結果で終わっている。
今度は誰が出てくることやら……。
第77話 「芸術家の少女」
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