第50話
「鉄クズがぁ!」
地面を蹴り、高々と飛び上がった
「ここで隙を伺っていてください」
「
そう短く告げて、
「無茶しないでね」
心配げに見上げる小さな少女のその言葉に、
「必ず貴女を守ります」
そして、真っ直ぐに
その様子を見て、
そんなものを見せるな──
沸き起こる嫌悪なのか恐怖なのか分からない感情に蓋をする。
目の前の物を壊して、憎い相手を殺す。
ただそれだけだ。
すると、蒸気が吹き出して全身に力が
このグローブとブーツは、一時的に使用者の筋力を増強させつつ圧力で更に威力を増す装置である。
また、身体を衝撃から守るためのものでもあった。
しかし使いこなす為には、その反動に耐え制御する筋肉と精神力が必要だった。
その反動に身体の節々が悲鳴をあげ始めていたが、彼女は気にしなかった。
同じく肉薄してくる
彼の左腕は動かない。
右腕だけで
しかし、その膝を
左腕が動かない事により隙だらけとなった
痛みに膝が悲鳴をあげる。
しかし
もうもうと積もっていた埃が舞い散った。
「
その声に、
──昔の自分を思い起こさせられて。
足をバタつかせて起き上がる
グローブから蒸気を噴き出させつつ、右、左と次々に拳の連打を彼の顔や腹にぶち込み続けた。
──コイツらがいなければ。
私は家族を失わずに済んだ。
──コイツらがいなければ。
私は裏切られることもなかった。
──コイツらがいなければ。
独りにされる恐怖を味わう事もなかった。
「やめて!」
後ろで少女の叫び声が聞こえる。
その悪寒を打ち消すかのように、更に
「やめてよ!」
更に少女が叫ぶ。
──誰か別の少女の声がオーバーラップして聞こえた気がした。
やめて!
私のオートマトンを壊さないで!!
「うるさいッ!」
ギラリと鋭い視線を
ブーツから蒸気を噴き出させて床を蹴ると、背後で小さくなっている少女の方へと迫った。
「じゃあ望み通りお前から殺してやる!」
弾丸のような速度で
しかし、
突然背中に重い何かがぶち当たり、バランスを崩した
腕でなんとか勢いを殺したが、全身が悲鳴をあげているのを感じる。
憎々しげに立ち上がると、そばにぶっとい腕が転がっていることに気がついた。
散々攻撃をガードして右腕はひしゃげ、ガードしきれなかった顔も微妙に歪んでいた。
所々人工皮膚が裂けて赤い体液が滴っている。
そんな、ボロボロで立ち上がる事も難しそうにする
「やめろ──」
「やめろ!」
叫んでいるのは、
「なんで助けるんだ! なんで助けようとするんだ!」
それとも他の誰に向けてか。
そんな彼女の叫びに、
「当たり前じゃない! だって
同じように、
「私はこの子の
例え私が壊れても、この子は必ず守ります。
それが私の──家族と言ってくれたこの子自身が──存在意義だからです」
──必ず守るよ──
さっきから、
誰かの声が、ひたすら
頭が痛い。
脈動に呼応して何かがガンガンと頭の中を揺らす。
「やめろ……」
「やめて……」
痛みに目を瞑ると、瞼の裏に何かの影が蘇る。
「思い出させないでッ!!」
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