HF-F01-002

 夕焼けは嫌いだ。


 空の赤とオレンジが──血を連想させるから。


 真っ赤な空。

 真っ赤な血。


 じわじわと赤が広がる先が、空なのか地面なのかの違いしかない。



 足元に、人形のように転がる、家族もの。


 ありえない方向に曲がった首、

 取れた腕、

 水風船をぶちまけたかのような壁、


 それはひたすら、赤、赤、赤。


 自分だけが助かったのは、何故だったのか。

 記憶が曖昧で、連続しているはずの時間軸がそこだけすっぽりと抜け落ちている。


 覚えているのは──


 半壊したオートマトンが、

 自分に手を伸ばしている映像


 そして


「そいつが一家を殺したんだ!」

 という誰かの叫び声。


 寄ってたかって沢山の人達が何かを蹴ったり殴ったりしてる。

 人混みの中心に在るのはなんだろう?


 そういえば──

 家から逃れた時に、私を抱いていたあの手は誰の手だった?


 分からない。

 覚えてない。

 思い出せない。


 だから──


 重要なのは、という事。


 私の家族を殺したオートマトンを、

 私は絶対に許さない。


 オートマトンを、

 私は絶対に許さない。


 そして、


 そのオートマトンを作ったヤツらを許さない。



 例え私が壊れても、必ず中邑ナカムラ李子リコを殺す。


 だって、アンタがオートマトンを作らなきゃ、私は家族を失わなかった。

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