第10話 有能な下士官殿

 さて。

 何とかM27の反動を気にせず使えるようになった。

 流石にオートで全弾ぶっ放すような使い方をすると反動が大きい。

 でもその辺りは運用次第だ。


 ミニミより軽いし精度も悪くない。

 いつもの無反動小銃よりむしろ命中率はあがるのではないだろうか。

 弾もボックス使えば100発まで入る。

 威力も中型までなら100メートル範囲で撃破可能。


 そんな訳で満足して戻ってみたところ。

 焼きそばの匂いが残ったリビング。

 さっきと同じ格好のまま正座させられている中隊長。

 そして机の上の書類を猛スピードで整理している陽菜さんが目に入った。


「お疲れさま」

 陽菜さんに声をかける。


「訓練はどうでした?」

「まあまあです。今度からちょっと武装を替えようかと思っていたのですけれど、目星がつきました」


「良かったですね」

 そんな事を言いながらも陽菜さんは整理しつつ書類を色々捌いている。

 なお何故中隊長が正座しているかはあえて聞かない。

 間違いなく陽菜さんに怒られて、反省させられているのだろうけれど。


「それにしても何で3日程度でこんなに書類が溜まるんですかねえ」

 そう言いながら陽菜さんは色々作業中。

 遂にパソコンまで使い始めた。


 ここの支部?は色々と陽菜さんの能力に支えられている。

 戦闘時の管制も書類も報告ものも。

 中隊長は見た目と階級はともかく、他の能力の全てで陽菜さんに負けている。

 まあ陽菜さんはこの若さにして士から叩き上げの曹長。

 だから実際相当に優秀なのだけれど。


「ところで蓮さん。突然で申し訳ありませんが、来週の火曜日にこの基地は移転の予定です。やっと予算が下りて契約も済んだそうで。部隊も少し増強しますから宜しくお願いしますね」


 おっ。


「良かったですね。このマンションでは自衛隊の車も停められませんし」


「一応秘匿基地ですから今後も自衛隊ナンバーの車は止めませんけれどね。それでも専用の連絡用車も2台来ますし、大分広くなりますし。人員も今の実質分隊以下の状況から小隊程度には改善する予定です」


 おお!


「ただちょっと田舎になるからお店とかは減ります。付近にはスーパーとコンビニくらいですね」


 俺の家と同程度という事か。

 KOKOSとかは行きにくくなるかな。


「まあ連絡用車が来ますから出かけられるとは思います。運行簿とかはつけなければいけないですけれど。ワンボックスのバンで9人乗りですけれど、無いよりは遙かにましですね。

 詳細は明日の定例ミーティングでしますけれど、お楽しみに。

 さて千秋、そろそろ正座いいですよ」


「ちかれたあ」

 そう言って中隊長は膝を崩す。

 なお足がしびれて立てない模様だ。

 足をマッサージしたりさすったりと色々やっている。


「来週からは部下も増えます。そういう格好でうろうろするのはやめて下さいね」

「はーい」

 どっちが上官だか。

 まあこういう指導、確かに軍曹の仕事だよな、イメージ的に。


 そんな事を思いながら。

「お先に失礼します」

 俺は部屋を出る。

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