1の2 訓練と日常の小風景

第9話 残念な中隊長

 翌日午後2時。

 まったりと俺は目覚める。


 今日は敵来襲で起こされずに済んだ。

 今までの感じだと敵が来るのは平均2週間に1回。

 前回、前々回の間が短すぎただけである。


 さて。

 寝たままスマホで基地の秘匿サイトに接続。

 訓練予定時間の希望を書き込む。

 今が午後2時だから、午後4時でいいか。


 訓練とは新武装のチェックをするためである。

 今のままだと、特に小型相手の場合の弾の余裕が無い。

 出現と同時に過半数を潰しているから何とかなっているだけだ。

 反動が大きい武器はちょっと怖いがやむを得ない。


 訓練予約はすんなり入った。

 そんな訳で起きる事に決定。

 まずは顔を洗いに洗面所へ。


 ◇◇◇


 特に何も無いし天気もいいので、今日は転送装置は使わないで行く。

 愛車のスーパーカブ110で走るとちょうど30分で基地だ。

 基地と言っても見かけはただの一般マンションの一室。

 来客者用駐輪場にバイクを止めて、中に入る。

 合鍵で鍵をあけて室内へ。

 そのままいつものリビングへ。


 部屋には誰もいなかった。

『非番です』

 そんなボードが中隊長席の山積み書類の上に置いてある。

 陽菜さんの席には『お出かけ中』。


 こんな状態で大丈夫なのかな。

 そう思いつつシミュレーターのセットをしていると。


 玄関側の洋室の扉が開いた。

 そして中から。


「陽菜、飯ある?」

 中隊長がふらっと出てきた。

 俺と陽菜さんを間違ったらしい。


 それにしても酷い格好だ。

 髪ボサボサ、首の伸びたTシャツ、ズボンという意味では無いパンツ姿。

 ちなみによれよれTシャツはノーブラで着ている。

 見ようによってはセクシーと言っていいのかもしれない。

 でも俺なら2:8の割合で『セクシー』より『残念』と判定したい。

 それなりに美人でスタイルがいいだけに余計に。

 いずれにせよ。


「中隊長、部屋の外に出るならもう少しマシな格好をして下さい」

 中隊長は部屋が余っているのをいいことにここに住んでいる。

 本当はちゃんと住宅があるらしいのだけれど、面倒という事で帰っていない。


「何だ、蓮ちゃんか。ちょい失礼、冷蔵庫まで」

 はだしでそのまま歩いて行く。

 おいおい。


「その格好、何とかならないですか」

「いいじゃん、非番だしさあ」


 じろじろ見る程訳ではないが、目のやり場に困る格好だ。

 一応鍛えているらしく体型は悪くないし、胸もそこそこある。

 でも色々しょうがないので無視。

 何を言ってもどうせ駄目だろうし。


「それではシミュレーター使いますよ」

「どーぞ。お、カップ麺発見!」

 中隊長は超大盛りのカップ焼きそばを棚から取り出す。

 そんな残念な彼女は無視して、俺は転送装置を訓練・自動モードにして。

 転送エリアに足を踏み入れる。


 同時にふっと変わる景色。

 だだっ広いグラウンドに、敵小型、中型、そして大型が2機空中に浮いている。

 大型が2機というのは前回出た装甲強化タイプを追加したのだろう。

 多分陽菜さんの仕事だ。

 あの人は色々と有能だから。


「高機動バーニア!サイガ・MK-107!」

 まずはいつもの無反動小銃でウォーミングアップだ。

 その後ミニミとM27を試してみる予定。

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