第7話 本日の考察 ~3人の武装について

「蓮、照準併せるまで時間稼ぎお願い」

 文月がそう言って。

「軽MAT!」


 おい。

 あれは確かに命中率が良くて破壊力もあるけれど。

 撃つのにちょい手間かかるし着弾までもちょい時間かかるだろ。

 敵より早く当てられるのか。


 仕方ない。

 俺は着地しその場で停止する。


『12、11、10、9……』

 俺を狙う敵を動かさないようにだ。

 敵は大型で遅いと言えども飛行物体。

 そして軽MATは本来戦車用。

 あまり動き回られるとまずいだろう。

 残り1秒の時点で一気に最高速で離脱するつもり。

 ぎりぎりまでここで待つ。


『3、2、1』

「バックパック以外の装備をパージ。最高機動モード!」

 逃げるの専用の最高速モードだ。

 体に負担がかかるし燃料食うけれどしょうがない。


 最高機動モードで飛行開始。

 固定した肩や腰が痛いがしょうがない。

 その直後に後方で爆発音。

 ズヴァヴァヴァーン。

 榴弾発射音か、それとも。


『軽MAT命中』

 ぎりぎりだ。

 敵の攻撃よりわずかに文月の攻撃が早かったらしい。


『敵沈黙。反応消滅』


『状況終了』

 中隊長の声。


『状況終了。通常空間に戻ります』

 陽菜さんの声でいつものマンションのリビングへ。


 ◇◇◇


 葉月は今日はさっさと帰った。

 より強い武器を色々と調べるのだそうだ。

 今日の敵に聖霊刀が効かなかったのが相当堪えたらしい。


 俺と文月は深夜のファミレスで夜食をとりつつ情報交換。

 ちなみに今日はKOKOSではなくカスドだ。

 普通のメニューならこっちの方が安いから。


「でも強化と言っても難しいよね。無理して威力が強すぎる武器を使ったら、他の制約が厳しくなる。活動時間も短くなるだろうし」


 文月が和風ハンバーグステーキを食べならがそんな事を言う。

 その意見の意味は俺にはよくわかった。


 使える武器にはそれぞれ制約がある。

 強い武器程色々制約が厳しくなる。

 俺の場合使えるものは『既に存在している武器道具か、少なくとも理論上可能な範囲の武器道具』だ。

 そして実在するものと比べると、まだ未開発のものは使用可能時間や付帯条件が一気に厳しくなる。

 

 例えば俺が使う『高機動バーニア』は後者の方。

 俺の場合、これの使用可能時間は10分程度が限界だ。

 しかも出せるのは1回の戦闘で1回だけ。


 他に未開発の機器類を複数同時に使用した場合。

 使用可能時間は更に更に短くなってしまう。

 つまり高機動バーニアを常用する場合、普通に使用出来るのは現代兵器までだ。


 葉月はファンタジー系武装。

 ただファンタジー的な武装なら何でも使える訳ではないらしい。

 前提条件として、『神話や伝説や物語として、ある程度以上の人に知られているもの』である必要があるそうだ。

 つまり完全オリジナルな武器とかは使用出来ないのだと。


 その点。

「文月は色々と便利だよな。未来道具だろうが魔法だろうが何でも装備可能だし」

 完全にアニメの世界のような未来兵器だって平気で使いこなしている。

 3人の中で一番万能と言ってもいい。


「でも、これはこれで大変なんだな。自由そうに見えるけれどやっぱり色々制限があってね。それに接近戦のような細かい動きとかは出来ないんだ。遠距離支援に徹しているからこそ許される武装。そんな感じだな」


 そう言えば確かに文月は接近戦は仕掛けないな。

 常に距離をとって支援に徹しているし。


「だから高機動接近戦を挑まれると逃げざるを得ない。そんな訳で2人には悪いが私に接近戦させないよう頼むよ。武装の豊富さと威力は頼ってもらっていいけれどさ」

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