349.マイスタークラス決勝トーナメント第二回戦

『さあ、第二回戦第二試合。イリス選手対バーレル選手。両者ともに準備は整ったようだ!』


 待機時間を経て、第二試合の開始直前。

 対戦相手と向き合って、これからのことを考える。

 ボクの装備は、前回と同じ短弓。

 相手の装備は……大きめのガントレットをつけてるから、やっぱり格闘装備かな。

 弓は槍以上に間合いが長いから、格闘戦の間合いになると結構きつい。

 それに、体格はボクよりずっと大きいから手足も長いし……。

 いちおう、対策はしているけど……そこまで上手くできないんだよね。

 リアルスキルが高い人とは、あまり比べられたくないなー。


『第二試合、カウントダウンスタート!!』


 遂にカウントダウンも始まった。

 相手は片足を引いて構えを採る。

 ボクも、矢を取り出して、すぐにでも攻撃に移れるように準備していた。


『……3……2……1……始め!』

「クイックアロー!」

「しっ!!」


 初撃は昨日と同じクイックアローから。

 今回は、相手を牽制するために連射をする。

 でも、あっちはお構いなしに突撃してきた。

 一本目は身を翻して回避、二本目と三本目は拳で叩き落とされた。

 トワもやってたけど、飛んできた矢を叩き落とすってどういう反射神経なのかな!?


「はっ!!」

「しまっ……」


 四本目を放つ前に懐に潜り込まれ、攻撃された。

 ボクの体は吹き飛ばされてしまったよ。

 幸い、すぐに立ち上がることができて、追撃は避けられたけど、結構きつい。


『一撃目から激しい動きが見受けられた! イリス選手が吹き飛ばされたのは一体!?』

『あれは、【拳撃】スキルの発勁ですね。出が早く攻撃力も高いですが、射程距離が短いのが難点です』


 やっぱり、いまのは発勁か。

 自分から間合いを離すようなことをしたから、スキルだとは思ってたけどやっぱり当たってた。

 それと、一撃で三割くらいHPを持っていかれたのは厳しいかも。


「これはきついなー。でも、まだ負けたわけじゃないし、頑張らないと!」


 再び弓を構えて、クイックアローで牽制。

 あっちも左右に移動して矢を躱しながら、少しずつ近づいてくる。

 三メートルくらいまで間合いを詰められたら、さっきのように矢を弾き飛ばしながら一気に近づいてきた。

 さっきと同じような状況だけど、今度はこっちが攻める番だからね!!


「せっ!!」

「いま! クラッシュダウンキック!!」

「なにっ!!」


 ボクのみぞおち付近を狙ってきた腕を躱し、強烈な足払いをあてる。

 カウンターとして判定されたみたいで、ダウンを取る事ができた!


「ウェポンチェンジ・魔導弓、ブラストアロー、チャージアロー、ロケットアロー!!」


 ダウンして動けない相手に向かって、コンボを叩きこむ。

 連続ノックバックで硬直時間を延長したところにロケットアローも追加され、一気にHPを五割以上削ることができた!


『次はイリス選手が強烈なコンボ!! それにしても、最初の蹴り技は一体?』

『【蹴撃】スキルのクラッシュダウンキックです。地面ぎりぎりまで姿勢を低くして、足払いをする技ですが……。イリス選手が【蹴撃】スキルを覚えていたことが驚きですね』


 うん、ボクもトワと訓練するまで覚えていなかったからね。

【蹴撃】は【格闘】の上位派生で、いろいろなキック技を覚えられるスキル。

 キックなのにカウンター技がいくつかあって、間合いを詰められた場合の対処用にって勧められたんだ。

 最初は使い方に戸惑ったけど、なんとか間に合ったって感じかな。


「クイックドロー、チャージアロー、チャージアロー」


 相手との距離も十分に開けたので、ここからは長距離戦の基本に従って戦う。

 通常攻撃を行わず、チャージアローだけを使うことで、相手に防御させない戦いを強いることができるんだ。

 チャージアローは防御してもノックバックが発生するからね。


 でも、あちらも矢の隙を見計らって少しずつ間合いを詰めてきている。

 そう簡単には近づけさせてあげないけどね!


「レインボーアロー!」


 今度は【魔導弓】スキルのレインボーアローを発動。

 このスキルは、七本の矢を放って攻撃する大技だ。

 特徴は、すべての矢がランダムな起動を描きつつ、狙った相手を追尾するってこと。

 つまり、ちょっとやそっとじゃ回避できないわけで……。


「このっ、なめるな!!」


 うわぁ……。

 レインボーアローも叩き落としているよ。

 でも、いろいろな方向から襲ってくる矢に対処しているということは、それだけボクへの注意も散漫になっている。


「ロケット……アロー!!」


 この隙に、最大チャージのロケットアローを撃ちこめた。

 これで、相手の体力は二割くらいまで減らすことができたよ。

 さて、追撃……。


「って、いった!?」


 正面からいきなり飛んできた、炎の塊に吹き飛ばされてしまった。

 今のって一体!?


『ここでバーレル選手、魔法を使ったようだ!! これまでは使ってこなかった、奥の手を切ってきたのか!』


 うーん、なにかの魔法スキルを使われたみたいだね。

 ……吹き飛ばされた間に、相手の姿が見当たらなくなった。

 なにかのスキルで隠れられたかな。

 ここは賭に出てみよう。


「テンペストアロー!」

「しまった!!」


 自分を中心にしてテンペストアローを発動。

 対戦相手の声は、ボクの真後ろから聞こえてきた。

 いつの間に回り込まれたんだろう。

 ともあれ、スキルの効果範囲に巻き込むことはできたみたい。


『試合終了!! 勝者、イリス選手!!』


 うん、相手のHPを削りきれた。

 これで、次の試合は鉄鬼との勝負だね。



**********



興味がある人向け、スキル解説。

今回は新出スキルも少ないので短め。


発勁:【拳撃】スキル。自分の手が触れている相手に大ダメージ+ノックバック。威力は高いが独特の前モーションが付いているので、知っている人にはかわされやすい

クラッシュダウンキック:【蹴撃】スキル。地面すれすれまで屈み強烈な足払い。カウンターであてると確定ノックダウン。実は使った瞬間に無敵時間もあるという、格ゲーみたいなスキル

レインボーアロー:【魔導弓】スキル。追尾効果を持つ七本の矢を放つ。ランダムに飛んでいくので躱しにくい。矢の飛んだあとに七色の道ができるので見た目も派手。これを全部撃ち落としたバーレルはメチャクチャすごい

フラッシュフレイム:【炎魔術】スキル。瞬間発動・瞬間着弾・エフェクトが派手というスキル。ただし、威力はかなり控えめ。主に目眩まし用スキル。イリスがロケットアローの反撃として食らったスキル(正確にはロケットアロー着弾寸前で使われたので、ロケットアローからの追撃に失敗した

ハイドインシャドウ:【暗殺】スキル。相手との距離に関係なく、対象の背後を取る事ができる。発動してすぐに背後を取れるが、五秒間行動不能。ただし、相手からの察知は不可。本編内では言及なし、最後にバーレルが使っていたやつ。ルーキークラス掲示板で出てきた、ハイドムーブの上位版。イリスがやったような全周囲攻撃にめっぽう弱い。

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