245.【防衛戦1日目】顔合わせと戦力確認

 午後のログインが終わった後は、雪音にメッセージを送ってから夕食の準備を始める。

 家事については基本的に遥華に任せているのだが、夕食の準備だけは俺がやることになっていた。

 とはいえ、夕食の内容も簡単なものですませてしまう。

 具体的に言ってしまえばオムライスである。

 それに付け合わせのサラダを作れば夕食の準備は完了だ。


「あ、お兄ちゃん。もう晩ご飯の準備できたの?」

「ああ、準備できてるぞ。お前もあまり時間はないだろ? 早いうちに食べるぞ」

「はーい。それじゃあ、ちょっと待っててね」


 その後、遥華と2人で夕食を食べてしまう。

 簡単な料理であるため、時間も少なくてすみ、その後の後片付けもすぐに終わらせてしまう。


 そう言えば遥華の方は防衛戦をどういう感じで戦うのだろうか。


「遥華、この後の防衛戦について何か聞いてるか?」

「うん? わたしは防衛戦には南門の防衛で参加するよ。主な役割としては、遊撃で敵の数を減らすことだね」

「そうか、遥華も南門の防衛か」

「そういえば、お兄ちゃんも南門だったね。お互い頑張ろうね」

「そうだな。被害を出さないようにお互い頑張ろう」


 お互いにそれぞれの予定を確認してゲームにログインする。

 別行動であるが故にそれぞれ準備が必要なのだ。

 防衛戦本番がどうなるかはわからないが、どんな敵が出てきたとしても対処するしかないのだから。

 さて、それじゃ、ログインするとしよう。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



 ゲームにログインして時間の確認。

 リアル時間は午後7時過ぎである。

 打ち合わせの時間はリアル時間で午後7時半からの予定なので、ゲーム内時間だと40分ほどの余裕がある。

 それだけあれば、ポーションを1ロットくらいは作成できる。

 どのポーションを作るかを考えないといけないが、既に作り置きしたポーションは納品されている。

 そう考えると自分用のポーションを作るのが一番なのかな。

 それなら、十二神将で消耗が激しくなるであろうMPハイポーションが一番だろう。

 俺はイベントサーバーに移動して、ポーション素材を買い込みポーション作りを始めた。

 20分ちょっとでポーションを1ロット作成し終わり、そろそろ予定時間なので待ち合わせ場所に向かう。

 待ち合わせ場所は南門前でというメールが来ていたのでそこに移動する。


「ああ、トワ君、来てくれたんだね。こっちだよ」


 南門前にたどり着くと白狼さんから声をかけられる。

 待ち合わせ場所にいたのはまず『白夜』の面々。

 白狼さんが指揮をとるんだから『白夜』がその配下にいるのは当然だろう。

 それから、イリスとユキも既に来ていた。

 残りのメンバーについてはほとんど面識はない。

 ……ただ一人を除いて。


「おう、トワか。イリスがこのチームだから、いるんじゃないかなとは考えてたがやっぱり参加か」

「久しぶりだな【剣豪】。相変わらず元気そうで何よりだよ」

「それはそうだろうよ。あたしから元気をとったら何も残らないからな!」


 ここにいたのは【剣豪】の二つ名を持つプレイヤー。

 プレイヤー名を霧椿。

 しゃべり方は男っぽいが、れっきとした女性プレイヤーだ。

 非常に優秀なアタッカーであるが、同時に団体行動は苦手……というより、本人のプレイヤースキルが高すぎて周りがついて行けないと言うべきだろうな。

 霧椿もここにいるって事はこのチームに参加することになるのかな?


「……まあいいか。それで、お前もこのチームに参加か?」

「おう、今回はあたしも参加させてもらうぜ! もっとも、あたしについてこれるプレイヤーはいないだろうから、一人で遊撃ポジだけどな」

「……相変わらず、周りにあわせられるプレイヤーはいないか」

「いねえなぁ。接近戦だったらお前もあたしと戦えるだろうけど、乱戦状態であたしについてこれる自信はあるかい?」

「それはないな。悪いがソロで頑張ってくれ」

「かまわないさ。あたしの場合、レイドであっても一人で遊撃しかしないしな」

「それもどうかと思うけど。ともかく、突出しすぎて死に戻りすることがないようにな」

「わかってるさ。あまり無理はしないようにするよ。防衛戦って事は最初はザコ戦だろうし、適当に斬り捨てて歩くとするさ」

「それがお前さんの一番いい使い方なんだろうなぁ……」

「そういうことさ。……さて、あたしらのチームが全員揃ったみたいだよ。戦闘開始前の意識あわせと行こうじゃないか」

「わかった。それじゃ、行こうか」


 霧椿との会話を終えて白狼さんの元に集まると、俺達以外にも多数のプレイヤーが集まっていた。

 ざっと数えた限り30人ちょっとなので、俺達のレイドチームが揃っていると言ったところだろう。

 それぞれの装備はしっかりと調えられていて、全員がかなり立派な装備に身を包んでいる。

 竜帝装備シリーズに身を包んでいるプレイヤーも多数いるので、個人個人の戦力も高いことだろう。


「集まってくれたようだね。知ってると思うけど、僕はこのチームの指揮官を務めさせてもらう白狼だ。まず今日はよろしく頼むよ。基本的には明日も同じメンバーで挑むことになるけど、リアル事情で参加出来ない人もいるだろうからね。そう言う人は遠慮せずに言ってほしい」

「わかったよ、白狼殿。それで、俺達の予定はどうなってるんだ?」

「そうだね。僕達の配備は基本的に部隊中央最前列だ。各パーティの人選は後で発表させてもらうけど、基本的にタンク達が最前列で攻撃を受け止めて、その隙に前衛攻撃部隊が突撃する形になるのかな」

「了解した。それで、白狼さんは南門の総指揮官でもあるはずだ。まさか自分も出陣するのか?」

「そうしたいところなんだけどね。そう言う訳にもいかないから、僕は後列で全体を見て指示を出す事になるよ」

「それが妥当だろうな。それで、【魔銃鬼】やら【サイレントシューター】、【剣豪】までいるみたいだが、そちらも一緒に戦うのか?」

「うーん、少なくとも【剣豪】霧椿さんは個人の判断で遊撃かな。【魔銃鬼】トワ君と【サイレントシューター】イリスちゃんは僕達の指示に基本的には従ってもらう形になるよ」

「……それって連携できるのか?」

「基本的には大丈夫なはずだよ。2人とは何度もレイドで一緒にクリアしてるからね。基本的な連携は出来ると思う。それに2人の役目は遠距離攻撃で敵のHPを削ってもらう事になるからね。そこまで複雑な連携は必要ないよ」

「そうか、それならいいんだ。それで、他には何かあるのか?」

「うーん、そうだね。それじゃあ、とりあえず全員の戦闘スタイルを確認させてもらおうかな。『白夜』のメンバーや『ライブラリ』のメンバー、霧椿さんは戦闘スタイルを知ってるけど、他の皆はよく知らないからね」


 白狼さんの提案で、全員が自己紹介を兼ねたプレイスタイルの確認が始まった。

 俺の知っているメンバー以外の参加者はタンクと前衛アタッカーが半々と言ったところだ。

 そして俺の自己紹介の番となった。


「知ってると思うけど、俺はトワ。【魔銃鬼】って最近だと呼ばれてるらしいな。基本スタイルは銃を使った遠距離攻撃。銃だったらどの種類でも扱えるから、ライフルを使った遠距離攻撃もそれ以外の銃を使った中距離戦闘もできる。あとは、刀も最近使えるようになったから近接戦闘も出来ないわけじゃない。……結局のところ、アタッカーなら何でもできる形になるけど、今日は遠距離攻撃での支援が主体になると思うからよろしく」

「……【魔銃鬼】がオールレンジに対応できるのは知ってたけど、そこまで何でもできるとは思わなかったぜ」

「そんなに喧伝してないからな。……ああ、そうだ。白狼さん、昨日、魔法タイプの広範囲攻撃を覚えたんだけど、それも試してみていいかな?」

「広範囲攻撃かい? どういう攻撃なのかな」

「基本的に狙いをつけた範囲全体に対しての攻撃かな。時間がなくてどの程度の威力かはわかってないけど、消費MPから考えるとかなりの広範囲大ダメージになると思うよ」

「ちなみに消費MPって言うのはどのくらいなんだい?」

「使う種類にもよるけど、俺が最初に使おうと思ってるのはMP400消費かな。それで、1回使うごとにリキャストタイムが300秒ですね」

「……それはまた、かなり激しいスキルだね。わかった、それじゃあ、開幕の初撃は任せるよ。他の遠距離攻撃にあわせて撃ってみてほしい」

「わかりました。それではそうさせてもらいますね」

「念のため確認だけど、の心配はないんだよね?」

「そちらは大丈夫です。きちんと回復薬を多めに持ち込んでますから」

「それならいいんだ。まずは開幕、よろしく頼むよ」


 その後も自己紹介は続き、ユキの番ではレイドメンバー全員に対する距離無視のバフスキルが使えるという事で非常に驚かれていた。

 もっとも、そのスキルをプラチナスキルチケットから入手したと告げると納得もされたが。


 全員の自己紹介が終わるといよいよパーティ分けとなったが、俺のパーティは俺達『ライブラリ』の3人に白狼さん、霧椿、タンクのガイスさんの6人となった。

 基本的に、ガイスさん以外はそれぞれに別々の役割を持った集まりである。

 白狼さん曰く『このメンバーなら自由に行動しても問題ないから』という事らしい。


 なにはともあれ、俺達のチームは戦闘開始の準備が整った。

 戦闘開始時刻までゲーム内時間で約30分。

 俺達は最後の確認をすませると南門の外へと移動していった。

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