69.GW2日目 ~鉱山ダンジョン深部 2 ~
「ふむ、サザン殿の頼みとあっては断れぬな」
GW2日目。
教授との待ち合わせ時間より1時間ほど早くログインできたため、俺はドワンを伴い鍛冶ギルドを訪れていた。
鍛冶スキルにおける『ミスリル金』のレシピを得るためだ。
「受付のものに話を通しておこう、そうすればミスリル金のレシピを買える」
サザンの紹介状の効果は抜群だったようで、こちらでもギルドマスターに会うことが出来た。
そして、話はとんとん拍子に進み、今に至る。
「ただし、レシピの販売価格はまけてやれんぞ」
「わかりました。それでは失礼します」
「うむ、世話になったのう」
俺とドワンはギルドマスターの部屋を後にし、鍛冶ギルドの受付まで戻ってくる。
「で、本当にドワンがレシピ代出す、で構わないのか? 俺の頼みなんだし俺が出してもいいんだが」
そう、レシピの代金をどちらが負担するのかで揉めていた。
自分が頼む以上、自分で払うと主張する俺。
自分のレシピになるから自分で払うと主張するドワン。
朝、早くログインして顔を会わせてから、ずっと平行線のままだ。
「本当にお主も頑固じゃのう。わしのものになるんだからわしが払うと言うておろうに」
「でも、俺からの頼みなんだから……」
「それならば、装備品を発注したときにでも、その分上乗せしてやるわい」
「でもだな……」
かれこれ合わせて30分は繰り返してるやりとりだ。
「ともかくこれ以上遅くなると、教授との待ち合わせに遅れるぞい。大人しく今はわしに払わせておけ」
「……わかったよ。後でキッチリ支払わせてもらうからな」
「それでよい。では受付のお嬢さん、レシピをもらえるかの?」
「かしこまりました。少々お待ちを……こちらになります。料金は10万Eになります」
「ほれ、これで頼む」
「……確認いたしました。それではこちらをどうぞ」
ドワンの手にミスリル金のレシピが渡る。
「ほう、これが、ミスリル金か。かなり特殊な合金じゃの」
「……それで、作れるのか?」
「練習は必要じゃが可能じゃろう。5月3日までに、上等なミスリル金の魔導銃が作れるようにしてやろう」
「それじゃ、そっちは頼むぞドワン」
「うむ、頼まれた。それでは、わしは先に戻っておるぞ」
ドワンが転移アイテムを使ってギルド内から直接帰っていく。
そして、俺は一度変装した上で第4の街を歩き、ガンナーギルドにたどり着いた。
「いらっしゃいませ……あら、トワさんですか。変わった格好ですね。今日はどのような用件で?」
どうやら
ついでなので動画の録画も開始っと。
「いや、ちょっと転職の事で質問したくてな」
「あら異邦人の方が聞くなんて珍しい。それで何を聞きたいのかしら」
「ガンナー系統で特殊ジョブがあったら教えてほしいんだけど」
「そうね……あなたじゃ就けないジョブだけど、コマンダーやヒットマンなんてのが1次職にはあるわね」
「ふむ、詳しく教えてもらっても?」
「コマンダーは拳銃とライフル、それから格闘に長けた人間用のジョブね。あなたはスキル用件は満たしているけど圧倒的に筋力と体力が足りないわ」
「それじゃ、ヒットマンの方は?」
「こちらはライフルを基本にサブとして拳銃を使うジョブよ。あなたの場合、筋力や体力だけじゃなく、もっとライフルの扱い方を学ぶ必要があるわ」
「なるほど、それじゃあ魔法銃士系列で特殊ジョブってないのか?」
「あら、それならもう就けるでしょう? そちらの特殊ジョブは
まさかこの2つが特殊ジョブだったとは。
「どちらのジョブも専用銃の扱いに長けていないとダメなジョブね。あなたなら申し分ないわ」
「それじゃあ2次職は?」
「それぞれの特殊ジョブから派生した完全な特化ジョブがあるけど……あなたにはまだ話せないわね。もう少しギルドランクを上げてくれれば話せるんだけど……」
「わかった、今のところはそこまでわかれば十分だ。ありがとう」
動画の録画をオフっと。
あとで、教授にこの情報を渡そう。
教授なら上手いこと、この情報を扱ってくれるだろう。
「それでトワさん。今日はライフルの製造はやってもらえないのかしら?」
「時間は……まだ大丈夫か。2回分ぐらいなら引き受けられるかな」
「それじゃお願い。出来る事ならギルドランクのためにも定期的に受けてほしいところね」
「今はちょっと忙しいから難しいけど、手が空いたらきます」
「そう、それじゃお願いね。じゃあついてきてもらえるかしら」
こうして俺は、2回分のライフル製造、計20丁を終えてからクランホームに戻った。
――――――――――――――――――――――――――――――
「おお、トワ君。君も早く来ていたのであるな」
「あれ、教授もうきたのか?」
約束の時間にはゲーム内時間だがまだ30分ある。
「いやはや待ちきれなくてな。早くきてしまったのである」
「そんな早くきても、揃わなければ行けないでしょう」
「うむ。だが君以外は、もうすでに全員きているのである。皆、それぞれの生産活動中であるがな」
「ふうん。それじゃあ、俺もちょっと失礼さ……いや、この場ででもいいか」
「どうかしたのかね?」
「いや、転職してしまおうかと思ってな。一度、工房に行ってからにしようかと思っただけだ」
「それならばここでも一緒であろう。それで、どのジョブに就くのであるか? そして、他に特殊ジョブの情報はあったのかね?」
「そんな一気に質問されてもな。まずは、この動画をどうぞ」
そう言って、教授に先ほど録画した動画を見せる。
「ほう、これは……なるほど、ガンナー系統の特殊ジョブの情報はこれなのかね」
「そういうことだ、で、この情報買う?」
「是非買わせてもらおう。会計はこのあと、ダンジョンから戻ったあとでするのである」
「毎度どうも。それで俺が就くジョブは魔導銃士な」
「そうであるか。魔法重視な君らしいといえば君らしいのであるな」
「そういう訳なのでジョブチェンジっと」
ステータスを操作して魔導銃士を選択する。
ついでにスキルで派生させていなかった【銃】スキルの派生を覚える。
ジョブチェンジ後のステータスはこれだ。
――――――――――――――――――――――――
名前:トワ 種族:狐獣人 種族Lv.28
職業:メイン:魔導銃士Lv.8
サブ:錬金薬士Lv.7
HP:149/149 MP:278/278 ST:149/149
STR:10 VIT:20 DEX:40
AGI:26 INT:50 MND:30
BP: 6 SP:28
スキル
戦闘:
【銃Lv30 MAX】【魔導銃Lv11】【格闘Lv30 MAX】【体術Lv4】
魔法:
【炎魔術Lv10】【海魔術Lv13】【嵐魔術Lv12】【雷鳴魔術Lv13】
【氷雪魔術Lv10】【神聖魔術Lv13】【魔導の真理Lv17】
生産:
【中級錬金術Lv3】【中級調合術Lv1】【料理Lv24】【生産ⅡLv13】
【道具作成Lv1】【家具作成Lv1】【魔石強化Lv20】
その他:
【気配察知Lv38】【魔力感知Lv38】【夜目Lv34】【隠蔽Lv38】【看破Lv38】【罠発見Lv34】【罠解除Lv34】【罠作成Lv1】
【奇襲Lv42】【隠密Lv41】【採取Lv26】【伐採Lv16】【採掘Lv40】【言語学Lv13】【集中Lv29】
特殊
【AGI上昇効果・中】【INT上昇効果・中】【風属性効果上昇・中】【風属性耐性・中】【二刀流】【眷属召喚】【魔石鑑定】
眷属
【神狼・フェンリル(幼体)Lv17】
――――――――――――――――――――――――
うん、MP以外はあまり変わってないな。
さすが魔法特化型。
「ふむ、ジョブチェンジは終わったのかね」
「ああ、終わったよ。もっとも、MP以外はほとんど計数値が低くて変わってないけど」
「まあ、仕方がないのである。……もうすぐ時間であるな」
「まだ時間あるだろう。あと20分も」
「うむ、そうではあるが……」
「ま、ちょっと落ち着け」
「あら、トワ。もうきてたの?」
教授とやりとりしてる間に柚月がログインしてきたみたいだ。
「教授もいらっしゃい。……そうだ、トワ、武闘大会にでるならそろそろ装備を整えないとね」
そう言いながら、柚月は手を差し出してくる。
「集めてたんでしょう。白銀魔狼素材、上級裁縫セットを使って最高の装備に仕立て上げてみせるから渡しなさい」
「わかってるよ。そろそろ頼もうと思ってたんだ。……ほら、これで全部だ」
「こんなに大量に集めてたのね。しかも、レアドロップの尻尾まで」
「オリジナル装備なんだ、素材はいくらあっても足りないだろう?」
「そうね、それじゃ、これは預からせてもらうわ。じゃあ、またね」
それだけ言うと、柚月は談話室から去って行った。
おそらく工房に籠もるつもりだろう。
「おまたせ、教授さん。……トワくんも戻ってたんだ」
「おう、戻っていたか、トワ。アレはいいレシピだぞ!」
「アレとは何かね? 気になるのである」
「悪いけどそれはナイショだ。武闘大会の隠し球に使うつもりだからな」
「そうか残念である。……これで全員揃ったのであるな。準備はいいのであるか?」
「料理は持ってきました」
「おれもポーション補充済みだ」
「わしも装備や道具の整備は終わってるぞい」
「では、鉱山ダンジョンの深層部に出発である!」
教授の号令の元、PTを組ん俺達は変装をしてから鉱山ダンジョン入口まで転移するのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――
鉱山ダンジョン入口から鉱山ダンジョン内部に転移、そしてシリウス達を召喚する。
昨日と同じPTで今回は35階から攻略を再開する。
「さてボスはどちらであるか……出来ればミニアイアンゴーレムであってほしいものであるな」
「そうそうレアなんてでないさ……ほら、普通のアイアンゴーレムだ」
ボス部屋を開けた先に待っていたのはアイアンゴーレムだった。
「……仕方がないのである。早く倒して先に行くのである」
「あ、ちょっと待って、せっかく新しいスキル覚えたんだし試し撃ちしてみたい」
「ふむ、それは私も興味があるのである。早く試すのである」
「そう急ぎなさんなって。『魔力集中』からの『マギチャージ:ライトニングジャベリン』そして『チャージショット』!」
まず『魔力集中』で魔法攻撃力を上昇、『マギチャージ』で魔法を魔導銃に込めて、『チャージショット』として放つ。
すると、
ズガァァァァァン!!
轟音とともに強力な電撃が解き放たれて、アイアンゴーレムが吹き飛んだ。
「ふむ、威力を込めすぎであるな」
「完全にオーバーキルじゃのう」
「すごいね……」
「完全にやり過ぎた」
つまりはそう言うことであった。
跡形もなく吹き飛んだアイアンゴーレムだったが、ドロップはしっかりあったらしく、鉄鉱石が手に入った。
「おお、聖霊石の欠片がドロップしたのである!」
どうやら、通常ボスであるアイアンゴーレムからも聖霊石の欠片はドロップするようだ。
クエストの進捗を確認すると『42/50』になっている。
確認するとドワンもドロップしていたようだ。
「さあ、先に進むのである!」
テンションの高い教授の号令で俺達は階段を下っていった。
そして36階以降もサーチ&デストロイで進んでいくと、
「ついに50個揃ったのである!」
37階でついに聖霊石の欠片が50個揃った。
「さあ、早くクエスト報告に……」
「まあ、待て、教授。まだ帰るのは早い」
「む、どうしてであるか?」
「今回のクエストは50個『納品』だ。多分、この50個は全て持っていかれる」
「それがどうかしたのかね?」
「50個全部納品してしまったら、自分達の分がないだろう? レシピブックだけあってもしょうがないぞ」
「む、そう言えばそうなのである。そして、聖霊石の欠片は譲渡不可、つまり自分で集める必要があるのである」
「そういうことだ。とりあえず40階まで掘り進んでいこう」
「確かにその通りであるな。早合点してしまったのである」
「わかってくれたならいいさ、さあ、先に進もう」
その後も敵を倒しながら進む事しばらく。
39階の途中でそれは起きた。
〈シリウスのレベルが最大になりました。未成体から亜成体に進化できます〉
「うん?」
「どうかしたのかね?」
「メッセージがでた。シリウスが進化可能だって」
「ほう、それはいいことではないか! 早速見せてほしいのである!」
「ちょっと待って、今、ステータス確認するから……」
シリウスのステータスを確認すると以下の通りだった。
――――――――――――――――――――――――
名前:シリウス 種族:フェンリル(幼体) 種族Lv.20 MAX
HP:324/324 MP:154/154 ST:283/283
STR:50 VIT:50 DEX:38
AGI:48 INT:36 MND:27
スキル
攻撃:
【爪】【牙】【体当たり】【蹴り】
魔法:
【雷鳴魔術】
補助:
【回復上昇Ⅱ】【物理攻撃上昇Ⅱ】【魔法攻撃上昇Ⅱ】
――――――――――――――――――――――――
ふむ、細かく確認してこなかったがかなり強くなってるな。
期待通りの物理アタッカー向けのステータスだ。
「それじゃあ、進化させるぞ」
「うむ、この光景は録画しておくのである!」
そんな幼稚園のお遊戯会じゃあるまいし……
まあ、俺も録画しておくけど。
それじゃ、進化を選択……進化先とかはなくて亜成体だけか。
ともかく選択と。
するとシリウスの体が光に包まれ、その体が徐々に大きくなり始めた。
光の体がおおよそ体長3メートルほどにまで大きくなったとき、光が薄れていきその中から、漆黒の毛並みに銀色の雷のような模様を宿した狼が姿を現した。
これが亜成体のシリウスか……
「あの毛玉が何とも凜々しくなったのであるなぁ」
「まったくじゃの」
「これはこれでカワイイですよ?」
「カワイイかどうかは別だと思うんだ」
さて、まずはステータスを確認っと。
――――――――――――――――――――――――
名前:シリウス 種族:フェンリル(亜成体) 種族Lv.1
HP:468/468 MP:187/187 ST:420/420
STR:70 VIT:70 DEX:53
AGI:68 INT:51 MND:37
スキル
攻撃:
【爪】【牙】【体当たり】【蹴り】【咆吼】
魔法:
【雷鳴魔術】
補助:
【回復上昇Ⅲ】【物理攻撃上昇Ⅲ】【魔法攻撃上昇Ⅲ】
【幼体化】【騎乗】
――――――――――――――――――――――――
ステータスめちゃ上がってるし、スキルも増えてる。
増えたスキルはと、
【幼体化】:幼体時の姿に戻る。または、亜成体の姿に戻る。
このスキルによるステータスの変化はない
【騎乗】:この個体に乗って移動・戦闘が可能になる。
亜成体時のみ使用可能
おお、ついにきたか、騎乗スキル!
……ただ、ここじゃ狭くて試せないな。
そして、この大きさじゃこの狭い坑道の中じゃ動きにくいだろう。
「シリウス、済まないがとりあえず幼体に戻ってくれ。ここじゃ動きにくいだろ?」
「わぅ」
一声なくとまた体が光に包まれ、今度は逆に小さくなった。
「なんじゃ、大きいままにせんのか?」
「ここじゃ戦い難いだろう。だから、幼体化スキルで元のサイズに戻した」
「そんなスキルがあるのか……是非詳細を!」
教授がせがむのは目に見えていたので、進化前と進化後の
教授は興奮してるが、先に進もう。
――――――――――――――――――――――――――――――
途中、プロキオンも亜成体に進化するという出来事もあったが、無事40階のボス部屋前までたどり着いた。
「さて、ここで行き止まりなのである」
唐突に教授がそんな事を言いだした。
「あれ、ボスは?」
「部屋の扉が開かないのである。代わりに転移装置は扉の前にあるのだが」
確かに、脱出用の転移装置が扉の前にある。
とりあえずショートカット登録してしまうか。
「それで、教授。この扉について情報は?」
「一切ないのである。『インデックス』で一通り調べたが、情報なしである」
『インデックス』が調べてわからないんじゃお手上げだな。
「というわけで戻って錬金術ギルドに行くのである。欠片も十分過ぎるほどに集まったのである」
結局、欠片は全部で89個手に入った。
やはりというべきか、ユキの分が多いが他のメンバーもそれなりの数を集めている。
「これ以上、ここにいても仕方が無いな。それじゃ、錬金術ギルドに向かおうか」
俺達はしっかり変装が出来ていることを確認して、シリウス達を送還。
その後、転移アイテムを使い第4の街へと向かうのであった。
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